『波よ聞いてくれ』中村ゆりかの主人公回に感じた“人生を切り開く”というテーマ 

『波よ聞いてくれ』中村ゆりかの主人公回

 だらしなく、いつも行き当たりばったりで、誰に対しても遠慮がない。『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)の主人公・鼓田ミナレ(小芝風花)は一見、尊敬には値しない人物だ。だけど、その何にも縛られていない感じが時々無性に羨ましくて、「こんなふうに生きられたらな」とも思う。

 ミナレと同じスープカレー店「VOYAGER」で働く城華マキエ(中村ゆりか)もその一人。5月19日放送の第5話は、彼女が実質の主人公回だった。

 第1話のラストで扉を電気ノコとともに壁をぶち抜き、家から出てくる衝撃的な登場を果たしたマキエ。その後、彼女は兄の亨(庄野崎謙)が「VOYAGER」の店長・宝田(西村瑞樹)を車ではねたお詫びとしてミナレたちと働き始めた。多くを語らない彼女の存在は謎に包まれていたが、前回、「私、兄に愛され過ぎて困ってます」と忠也を演じる片寄涼太の出演作にかけた台詞で6年間も亨によって自宅に軟禁されたことを打ち明けた。そんな亨がついに退院した宝田とともに店を訪ねてくる。

 たまたまマキエが忠也に寄りかかっているのを目撃してしまった亨は逆上。怒りに任せて忠也を手にかけようとし、店は大騒ぎに。そのシスコンぶりはもはや異常だが、彼は彼なりに亡くなった両親に代わって妹のマキエを守ろうと必死だった。そんな兄の手から何とか逃れ、「VOYAGER」に流れ着いたマキエに多大な影響を与えたのが、店内のラジオから聞こえてくるミナレの言葉だ。ミナレがまどか(平野綾)のストーカーに向けた「あなたの人生の主役はあなたでも、Mさん(まどか)はあなたの人生の脇役じゃない!」という言葉が巡り巡ってマキエの自立心を芽生えさせる。

 こういうことは別に初めてではなく、これまでもまどかや瑞穂(原菜乃華)をはじめ、ミナレの周りにいる人たちはみんな彼女の無鉄砲ぶりに驚いたり、呆れたりしながらも不思議と感化されてきた。面白いのは、ミナレ本人がそのことにちっとも気づいていないところだ。だから自分のダメさ加減に落ち込んだり、番組で普通のラジオパーソナリティっぽく振る舞ってみたりするのだけれど、周りが求めているのはあくまでも素のままのミナレ。マキエが人気ラジオ番組のMCを務めているお笑い芸人コンビ・アナグマ泰治(流れ星☆)の治郎(たきうえ)と彼女の修羅場に巻き込まれている現場に、ネタのためならたやすく乗り込んでいける破天荒さがミナレ自身の魅力であり、番組の魅力でもあり、そして本作の魅力なのである。

 でも、自分が持っている才能に気づいていないのはマキエも同じ。マキエは密かに想いを寄せている忠也がミナレにベタ惚れなのもあって、彼女に若干の嫉妬も混じった憧れを抱いているが、実はミナレにはないものを持っていたりする。それは、アナグマ泰治のラジオ番組に応募したネタが採用されるほどの企画力。その誰もが認めるほどの才能は、マキエが電気ノコを手にあの家を飛び出した瞬間から溢れ出した。

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