第76回カンヌ国際映画祭開幕 是枝裕和『怪物』、北野武『首』など注目作を紹介

 5月16日(現地時間)に第76回カンヌ国際映画祭が開幕した。これから5月27日までの10日間、各国から集められた注目の最新作が上映される。ポストコロナ時代の幕開けとなる今年のカンヌでは、是枝裕和や北野武の最新作、そして役所広司主演のヴィム・ヴェンダースの作品が上映される予定で、日本での注目度も高い。コンペティション部門では、そのほかカンヌ常連監督の新作も目白押しだ。ここでは、今年のカンヌ国際映画祭の注目のトピックをまとめて紹介していこう。

巨匠たちの最新作が目白押しのコンペティション部門

 コンペティション部門で日本から注目が集まるのは、やはりなんと言っても是枝裕和の『怪物』だ。脚本はドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)や映画『花束みたいな恋をした』(2021年)などを手掛けた人気脚本家の坂元裕二。音楽は、今年3月に惜しまれつつもこの世を去った坂本龍一さんと、日本を代表する才能が集結した大注目作だ。ささいな子ども同士のケンカだったはずが、それぞれの主張が食い違い、体罰問題として社会やメディアを巻き込んだ大事件に発展していく。そんななか、ある日子どもたちが忽然と姿を消すという謎めいたプロットがすでに話題を呼んでいる。日本では6月2日の公開が決定しているが、2018年の『万引き家族』につづき2度目のパルム・ドール受賞となれば、さらに注目度は増すだろう。

Photo by Marc Piasecki/Getty Images

 ヴィム・ヴェンダースの『PERFECT DAYS(原題)』は、日本が舞台。主演に役所広司を迎え、東京・渋谷の公衆トイレの清掃員として働く男のささやかな日々に楽しみを見出していく姿と彼の過去を描く。共演には柄本時生や田中泯、三浦友和、石川さゆりらが名を連ね、話題性も抜群だ。『パリ、テキサス』(1984年)でパルム・ドールを受賞したヴェンダースは、今回で9度目のコンペティション部門への出品となる。約40年ぶりに栄冠を手にすることになるのか注目だ。日本公開は未定だが、受賞すれば勢いづくことは間違いない。

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 もう1人注目したいのは、イギリスの巨匠ケン・ローチ。田舎町でパブを営む男と、シリア難民の女性の間に芽生える思いがけない友情を描く『The Old Oak(原題)』は、テーマ的にも昨今のヨーロッパが直面している問題を扱っており、審査員のウケも良さそうだ。これまで『麦の穂をゆらす風』(2006年)と『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016年)でパルム・ドールを獲得しているローチは、もし今回受賞すれば、史上初の3度目のパルム・ドールとなる。そんな偉業を目撃することができるのか、期待が高まるところだ。

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 そのほかにもカンヌ常連組が揃い踏みしており、注目が集まっている。ウェス・アンダーソンのSFロマコメ『ASTEROID CITY(原題)』は、常連キャストに加えてトム・ハンクスとマーゴット・ロビーがアンダーソン作品に初出演。ジュード・ロウとアリシア・ヴィキャンデルがヘンリー8世と彼の最後の妻キャサリン・パーを演じるカリム・アイヌーズの『Firebrand(原題)』、トッド・ヘインズの『MAY DECEMBER(原題)』では、ナタリー・ポートマンとジュリアン・ムーアが共演し、レッドカーペットも大いに賑わいそうだ。

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