『怪物』エリート刑事役で話題沸騰! ヨ・ジングの演技力の高さを味わえるドラマ3選
2021年の第57回百想芸術大賞で、作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞のTV部門3冠に輝いた韓国ドラマ『怪物』。4月にNetflixで配信がスタートしてから、改めて注目を浴びている。
ベテラン俳優のシン・ハギュンと子役時代から高い演技力に定評のあるヨ・ジングがバディを組む刑事を演じ、閉鎖的な田舎町を舞台に連続殺人事件に挑む心理サスペンス。「主演2人の演技が見事で、物語にぐいぐい引き込まれる」と評判の『怪物』だが、本稿ではヨ・ジングにスポットを当て、彼が過去に出演したドラマのおすすめ3選を紹介したい。
『太陽を抱く月』
筆者がヨ・ジングに注目したのは、2012年に韓国で放送、日本では2013年にNHK BSプレミアムで放送されたキム・スヒョン主演の『太陽を抱く月』だった。キム・スヒョンが演じる朝鮮王朝の王イ・フォンの少年時代をジングが演じ、子役とは思えない高い演技力にくぎ付けになった記憶がある。若き世子(セジャ)を生き生きと演じ、初恋の相手で世子嬪(セジャビン)として迎えるホ・ヨヌ(ハン・ガイン/子ども時代はキム・ユジョン)との恋物語をみずみずしく表現した。
何しろジングとキム・ユジョンがかわいらしい。2人が次第に心を通わせていくさまが初々しく、観ていて思わず微笑んでしまう。世子嬪として教育を受けるヨヌが、慣れない慣習に戸惑う中、フォンが優しく気遣う姿に癒される。
しかし、そんな2人の幸せは長く続かず、韓国時代劇でお約束の反対勢力の陰謀によって、ヨヌは呪いをかけられ、原因不明の病に伏してしまう。
健康に問題がある者を世子嬪として迎えるわけにはいかず、ヨヌは宮殿を追われることになる。それを止めることができず、悲しみのあまり絶叫するフォン。ヨヌが宮殿を去る日、号泣しながらヨヌに向けて「私の妃だ!!」と叫ぶシーンを演じたジングの表情が圧巻で、涙がこぼれる。この作品の中で代表的なシーンの一つだといえる。
主人公の少年時代を演じたジングの出番はわずかながら、彼の将来性に高く期待を寄せることになった作品だ。
『王になった男』
時代劇が続いてしまうが、ヨ・ジングを語る上で『王になった男』は避けて通れない。
全国を放浪する旅回り一座のハソンは、王様や両班などの支配階級に扮して風刺劇を演じる役者。物まねが上手なので王室ネタで笑いを取り、親代わりで一座を率いるガプスとたった一人の肉親である妹・ダルレと共に、全国各地を放浪しながら幸せな日々を送っていた。
一方で、時の王として君臨していたイ・ホンは、自分を暗殺しようとする勢力におびえる毎日で、心を病んでしまっていた。その様子を間近で見ていた都承旨のイ・ギュ(キム・サンギョン)は、偶然王とそっくりな容貌のハソンを見つけ、王の影武者に仕立てることを思いつく。
ジングは、旅回り一座のハソンと王であるイ・ホンの2役を物語の中で演じているのだが、もともと高い演技力が評価されている彼の実力が存分に発揮されている。
まずハソンとイ・ホンは、顔こそ同じだが、性格が全く違う。妹思いで心優しく明るいハソン。一方でイ・ホンは粗暴なふるまいでお付きの者たちを翻弄し、なおかつ暗殺に怯えているため薬に溺れ、心を病んでいる。理想的な王とは程遠い存在で、心優しく聡明な王妃ユ・ソウン(イ・セヨン)との関係も芳しくない。
そんな2役をジングは見事に演じ分けている。顔は同じなのに違う人物なのでは……と錯覚してしまうほどだ。それは王妃ソウンとのやり取りで顕著に表れている。
世子時代の心優しいホンからすっかり変わってしまい、薬に溺れ、道から外れてしまった王から距離を置いている王妃。ホンとソウンのシーンでは緊迫した雰囲気が漂う。自分を避けているソウンに冷たく当たってしまうホンは、射るような視線でソウンと話す姿が印象的だ。
一方で、王と入れ替わったハソンがソウンと語り合うシーンは、全く雰囲気が違う。明るくて優しいハソンが、ソウンのことをあたたかい視線で見つめ、思いやりのある言葉をかける姿に胸がキュンとなる。
宮廷で繰り広げられるハソンとソウンの恋模様が美しい映像美とともに描かれていく。ハソンはお茶目なので笑えるシーンもたくさんあるのだが、偽の王を演じソウンを欺いていることに罪悪感を抱き悩む姿を、ジングはチャーミングに演じている。
演技が達者なジングの真骨頂を味わえる本作は、必ず観るべき作品だといえる。