ジェームズ・ガンが真骨頂を発揮した『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
そして音楽の使い方も抜群だ。単なるBGMではなく、きちんと最後の最後でシリーズを通しての意味を持たせてくるのが偉い。何もかも異なる者たちが、無心に音楽を楽しむシーンで物語が終わるのは、ド直球だが感動的なラストである。特に、個人的な話になるが……私は90年代に自我を築き、2000年代に青春を過ごした世代なので、KORN(陰鬱&激重ロックバンドの超大御所)とブリトニー・スピアーズ(世界的に大ブレイクしたアイドル)の名前が出てくるところで感極まってしまった。当時、この両者は正反対の位置にあったが、現代を生きる少年少女から見れば「懐メロ」と一括りにされてしまうのだ。当時を知っている者としては苦笑しつつ、しかし、これこそ理想的な音楽としての扱われ方だとも思った。当時のあれこれを知ることも楽しいが、何事もまずは「これが好き」と軽いノリで楽しむところから始まるものだ。
そんな調子で「あれはいいよね」「これもいいぞ」と呑気に音楽の話をしながら、巨悪に立ち向かっていく姿は、間違いなく『GotG』シリーズとして完璧なラストだった。世界は辛いことや悲しいことに溢れているが、趣味の話ができる仲間と、困っている人間を助けようという気持ち、それらがあれば何とかやっていけるのだ。本作は過酷で残酷なドラマを描きながら、優しさと明るいメッセージ性に満ちている。ジェームズ・ガンの監督としての真骨頂がここにある。間違いなく、MCU映画の歴史に残る傑作だ。
■公開情報
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
全国公開中
監督:ジェームズ・ガン
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:クリス・プラット、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼル、ゾーイ・サルダナ、カレン・ギラン、デイヴ・バウティスタ、ポム・クレメンティエフほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023