『ラストマン』心太朗が背負う闇の深さ 大泉洋が体現した人間ドラマの軸
バディの距離が限りなく開いた第2話で、犯人だけでなく警察や視聴者もだまして仕掛けた罠。心太朗をあわや殺人犯と思わせ、警察内部の隠ぺいというミスリードを誘ってから、油断しきったところで満を持してヒーローが登場する。接近戦にめっぽう強い皆実はさながらピストルを構えた座頭市のようで、テクノロジーで武装して死角がない。
バディの絆も強調されていた。自らの命を危険にさらしてまで、心太朗は皆実を信じていたし、皆実はその期待に応えた(応援を呼ばず単身乗り込んできたのは誤算だったが)。心太朗が直視できない自身の内面を、視力のない皆実は曇りのない眼で見抜いていた。まさに「中身だけで判断する」という言葉通りだが、その根拠が単なる性善説や一方的な思い入れではなく、捜査官としての経験に基づく分析と判断であるところが心憎い。
鼻にかかったトーンと抑揚のある福山雅治の口調を過去作と比較する声もあり、たしかにと思う一方で、どこかで聞いたことがある気がして思い当たったのは、福山と大泉の関係性だ。公私ともに交流の深い2人だが、今作の福山は大泉による声まねに意図的に寄せているように聞こえる。福山の特徴的なボイスやしゃべり方の癖が出ていると思うのだが、折に触れて大泉はトークやバラエティで福山のものまねを披露しており、そのせいでそう聞こえるのかもしれない。気心の知れた2人だから役と重なってさまざまな想像を膨らませるし、こんなところにもキャスティングの妙を感じる。
■放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs