『フェイブルマンズ』で主人公役に抜擢 ガブリエル・ラベルが見たスピルバーグの素顔

『フェイブルマンズ』主演俳優が語る撮影秘話

 『E.T.』『ジョーズ』『ジュラシック・パーク』『インディ・ジョーンズ』……世界中の誰もが知るような映画を世に送り出し続けている映画界の巨匠スティーヴン・スピルバーグ。そんな彼が自身の原体験を描いた映画が、3月3日より公開中の『フェイブルマンズ』だ。スピルバーグの幼少期を反映させた主人公サミー・フェイブルマンを演じたのは、オーディションでこの大役を射止めた新星ガブリエル・ラベル。スピルバーグとのオーディション秘話や役作りについて話を聞いた。

“スピルバーグの映画をダメにしたヤツ”にはなりたくなかった

ーーサミー役はオーディションで勝ち取ったそうですね。まずはオーディションで印象的だったことを教えてください。

ガブリエル・ラベル(以下、ラベル):最終審査はZoomで、スピルバーグの前で2つのシーンをやることになりました。その前の2日間は、そのシーンを磨き上げるために練習しかしていませんでした。最終審査が始まる40分前から、瞑想したり、録画するための準備をしたり、必要なことは全てやりましたね。緊張はしていましたが、準備はしっかりやったので安心感もあったんです。結果的に、すごく上手くいったことを覚えています。演技自体は2つのシーンをやったんですが、1時間のミーティング時間のうちの半分以上はお喋りだったんですよ。

ーー30分以上が会話だったんですね。

ラベル:お互いをよく知るために35分くらいお喋りをして、そこで彼が人としてどういう人なのかがよりよくわかりました。すごく感じが良くていい人で、しかもチャーミングで驚きました。また、なぜこの映画を30年前ではなく今撮るのかを聞いたり、お互いの人生について話し合ったりする中で、この映画がどれほど彼にとって重要であるかがわかったんです。とても楽しかったし、自分の演技を誇りに思いました。だから、ミーティングのあとに、「もし今回役を得られなくても、次回にチャンスがあるかも」と思ったんです。だって彼は僕の名前を知ったわけだし、僕はある意味で彼を感心させたと思いました。「もし今回がダメでも、それは僕の演技が悪かったとか、ミーティングがうまくいかなかったからではなくて、彼が違うキャラクターを探していたんだ」と思えたんですよね。

ーースピルバーグ監督と通じ合えたということですね。

ラベル:まさにその通りです。あのミーティングで、自分がすごく受け入れられたと感じました。そして次の日、役をもらえたことがわかったんです。クレイジーですよね(笑)。だって人生が変わるほど大きな出来事だし、たくさんの人が僕を知るようになるわけだから。そして今回の仕事が始まりました。

ーースピルバーグ監督は誰もが知っている名作を何作も世に送り出しています。あなたにとって、スピルバーグ映画の印象はどのようなものでしたか?

ラベル:彼の映画についての僕の印象は、いつも楽しいということ。どの作品も、全面的な映画体験を与えてくれるんですよね。喜び、スリル、悲しみ、怒り、恐怖……その全てを感じることができます。彼は、カメラの位置やレンズの種類、カメラの動きによって観客の感情を操作する。いわば、ペンの代わりにカメラを使う“作家”なんですよね。それと、彼は自分が作る必要性を感じた映画しか作らない。だから、これまでに彼が作った映画は、全て彼にとって個人的なものなんです。スピルバーグ監督は、僕が今まで会った人の中で、一番感情的な知性が高い人ですね。だからあれだけ成功したフィルムメイカーになったんだと思います。映画のどの瞬間においても、彼は何を感じるべきかがわかっているから。

ーーちなみにスピルバーグ監督の作品の中で、もっともお気に入りの作品はどれですか?

ラベル:う~ん……『フェイブルマンズ』がその一つですね(笑)。『太陽の帝国』と『未知との遭遇』も大好きだけど、『シンドラーのリスト』が彼の最高傑作だと思います。“お気に入り”と呼ぶには悲しすぎる映画ですけどね。

(左から)ガブリエル・ラベル、スティーヴン・スピルバーグ監督

ーー今回あなたが演じたサミーは、スピルバーグ監督自身の幼少期が反映されたキャラクターです。演じるにあたって、スピルバーグ監督から何かアドバイスや情報共有はあったんですか?

ラベル:役が決まったらすぐに、彼が12歳から18歳の頃の日記を読み上げるのかと思ったんですが……(笑)。僕を椅子に座らせて、「僕であるということはこういうことだ。これが僕のマニフェストだ」と聞かされるのかと思ったけど、そういうのは全くありませんでした。僕の方から彼を捕まえなくてはいけませんでしたし、もちろんプレッシャーは感じました。役者として最大のチャンスだし、彼の人生や両親について、そして彼の映画に対しての大きな責任があるわけですから。“スティーヴン・スピルバーグの映画をダメにしたヤツ”にはなりたくないですからね(笑)。そういったプレッシャーは、僕にとって克服すべき障害でもありました。

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