『舞いあがれ!』に通底する“スクラム”の精神 小堺の工場を救うことは何を意味するのか

 舞(福原遥)に突然、工場をたたむことを告げた小堺(三谷昌登)。『舞いあがれ!』第103話では、そんな彼を説得する舞の奮闘ぶりが描かれた。50年、父が歯を食いしばって頑張ってきた会社を諦めるほかないと言う小堺。そんな彼を通して舞が思い出すのは、経営苦難に陥った時にそれでも頑張ろうとした父・浩太(高橋克典)、そして彼の死後に苦渋の決断として会社を一度はたたもうとした母・めぐみ(永作博美)の姿。小堺に「なんでそこまでするねん」と言われる舞が、彼の代わりに新商品を企画することを熱心に考えるのは、文字通り“小堺さんだけの問題じゃないから”だ。

 前週で描かれたオープンファクトリーを通して、ずっと前に航空機部品のセミナーに参加した時から提案していた「町工場が協力する」というスクラムを舞は現実化させてきた。今週はそこに入る余地のなかった、より小さな町工場の行方を追う物語になっているが、どこに頭を下げても発注がなかなか貰えなかったIWAKURA、そして新人営業の舞の葛藤が過去に十分に描かれてきたからこそ、今回の小堺の工場の問題がより身近に感じられる。

 どこか一社だけが突出して技術も商品開発能力も高いのではなく、どこの工場も高くて、一緒にやるからこそより良いものが作られるというコンセプト。それは人と人とのつながりにも通じていて、今思えば、『舞いあがれ!』で描かれてきた舞の物語には、なにわバードマンの頃から“スクラム”が欠かせないキーワードだったのかもしれない。ものづくりから距離を置いた航空学校編でも、柏木(目黒蓮)のような一見突出した天才児も終盤で重大なミスを抱えていることがわかり、それを彼ほどの技術はないが冷静な視点を持つ舞が手助けしたことで最後のピースが埋まるなど、「誰かと一緒になるからこそより良い存在になること」がテーマとして通底しているように感じる。

 そんな中で、3週間かけて生まれた金網のハンモック。小堺も、その出来栄えと周りの町工場の協力に感謝しきれない様子だった。そこで彼は「商品が売れたら、うちにも儲けがあるんやから」と言葉を受ける。今回でいえば、小堺のところでは作ることができなかった支柱が例に挙げられるが、商品開発に参加した工場にとっては、その商品の発注=自社のパーツの発注になるため、利益も一緒に受け取ることができる。まさにウィンウィンの関係というやつだ。逆に、高い技術力を持っているのにそれを活かし切ることなく潰れてしまった工場があったとして、そこと手を組めば良い製品を作れたかもしれない工場も、後追いで潰れてしまうかもしれない。「小堺さんだけの問題ではない」という言葉の裏には、町工場同士の情緒的な助け合いの精神もあるが、それだけでなく文字通り利益循環の可能性も含まれているのだ。

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