『劇場版ポルノグラファー』も“新作”に? 日本初の「Dual 3D」を担当者に聞く

日本初の「Dual 3D」を担当者に聞く

 配信サービスやBlu-ray&DVDで自宅で旧作を観られるとしても、大きいスクリーンといい音響の映画館でもう一度お気に入りの映画を観たいと思う方は少なくないだろう。実際、さまざまな特集上映企画やファンからの要望を受けて、“映画館映え”する映画が再上映される企画は一定数ある。

 映画館の価値が“体験”へとさらに変化していく中、映画ファンを驚かせる新たな上映企画が誕生した。2月10日から2月16日までの1週間限定で上映される『劇場版ポルノグラファー~プレイバック~』に採用された「Dual 3D」だ。(※)

 「Dual 3D」とは、シーンや鑑賞者の好みに合わせて、2D/3Dの鑑賞方法を自由に選択できる新しい上映体験。これまで、3D映画といえば、上映中は最初から最後まで3Dメガネをかける必要があった。それゆえ、メガネをかけている圧迫感だったり、ずっと3D映像を観ていると酔ってしまう方などは、3D映画に興味があったとしても、意識的に避けてきた方もいるだろう。だが、「Dual 3D」は、メガネをかければ3Dに、外せば2Dとして、自分の好みにあわせていつでも好きなときにシーン単位で映像を選択できるのだ。

 「Dual 3D」を開発した日本電信電話株式会社 研究企画部門の伊藤翔氏は、この技術について次のように解説する。

「従来の3D映像は、3Dメガネをかけることで、右目と左目に入る視差のある映像が調整されて3D映像になるという仕組みでした。ですので、メガネを外してその映像を観ると、ズレのある二つの映像を観る形になっていました。今回の技術では、映像の方に仕掛けを行いまして、メガネをかけない場合は両目に入る映像間でのズレが認識されなくなる処理を行うため、自然な2D映像を楽しむことが可能となります」(伊藤)

 「Dual 3D」版として上映される『劇場版ポルノグラファー』は、製作時には「3D」化されることがまったく想定されていなかった作品。しかし、「Dual 3D」の技術を使うと、どんな作品も“3D化”が可能だという。

「シーンによって3D化することが難しいものや、向き不向きは当然ありますが、技術的にはどんな作品でも3D化することは可能です。当初は暗いシーンや、動きが激しいシーンは難しい部分もあったのですが、開発を行っていく中でそれらもクリアになっていきました。アニメーション作品やモノクロの作品でも、それは変わりません」(伊藤)

 “どんな作品でも3D化できる”。この事実は、作り手にとっても、観客にとっても、従来の作品の楽しみ方を大きく変える動きになりそうだ。『劇場版ポルノグラファー』の「Dual 3D」を担当した松竹株式会社の山本容子氏は、「新しい映画体験になる」との思いで今回の企画に動いたそうだ。

「配信サービスやスマートフォンの普及により、今はどんなときでも映像に触れることができる時代になっています。映画を自宅でも外出先でも観ることができる中で、映画館で映画を観る楽しさを味わっていただくひとつのきっかけになるのではないかと感じました。従来の作品も3D化されることで、また違った魅力、“新作”として新たな発見を感じていただけるのではないかと思っています。『劇場版ポルノグラファー』も何度も観ていた作品なのに、別の作品を観ているような驚きがありました」(山本)

 現在公開中の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』をはじめ、3D映画として作られてきた作品の多くはアクション映画だ。『劇場版ポルノグラファー』をはじめ、アクションジャンルの作品以外でも、Dual 3Dによって新たな魅力が引き出せるのではないかとNTTコミュニケーションズ株式会社ビジネスソリューション本部第四ビジネスソリューション部の森山寧子氏は語る。

「Dual 3Dでは、陰影がより際立つ形で画面の奥行きを表現することができます。なので、美しい風景がある作品は活かしやすいですし、『劇場版ポルノグラファー』のように登場人物の表情の機微が際立つ作品とも相性がいいと感じます。2Dのときよりも、人物をよりリアルに、立体的に感じていただけるのではないかと思います」(森山)

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