宇野維正の興行ランキング一刀両断!
「東映トップ3独占」「半年ぶりの実写映画1位」よりも重要な地殻変動
先週末の動員ランキングは、大友啓史監督の『レジェンド&バタフライ』がオープニング3日間で動員37万1000人、興収4億9700万円をあげて初登場1位となった。2位につけたのは『THE FIRST SLAM DUNK』。これで連続1位が8週でストップしたことになる。週末3日間の動員は23万人、興収は3億4500万円、累計興収では94億5400万円と、今週末にも100億円を突破しそうな勢い。そして3位は1月29日(日)で終映となった『ONE PIECE FILM RED』。週末3日間の動員は21万8000人、興収は2億9200万円。こちらは結局、公開177日間で動員1427万人、興収197億円を計上。この記録は国内の歴代興収ランキングで2004年公開の『ハウルの動く城』の上、1997年公開の『もののけ姫』の下に位置する歴代8位となった。
前回のコラム(公開8週目にして驚異の前週比96% 『THE FIRST SLAM DUNK』を止める作品は?)で予想した通り、東映がトップ3作品すべてを独占するという史上初の快挙を成し遂げたことになるが、もう一つ注目すべきは、『レジェンド&バタフライ』が1位となったことで、半年(26週)ぶりに実写映画がトップになったこと。つまり、先週末まで動員ランキングのトップは半年間ずっと国内アニメーション作品だったわけだ。中国、北米に続いて世界で三番目の規模を誇る日本の映画マーケットの特異性、そしてその特異性を原動力にして映画興行がコロナ禍をいち早く抜け出したことについては海外メディアからも改めて注目が集まっているが(※1)、それをもって日本の映画マーケットのガラパゴス化を揶揄するのはひと時代前の認識だ。
つい先日、Netflixは今年世界配信する実写版テレビシリーズ『ONE PIECE』の初ビジュアルを発表したばかりだが、今回の『ONE PIECE FILM RED』も2022年11月4日に北米で公開された際にはボックスオフィスでデイリー1位を獲得(週末成績のランキングでは初登場3位)。現在も公開中の地域も含めて、既に全世界興収で319億円を稼いでいる。つまり、日本での197億円を差し引いた国外だけでも、軽く100億円を超える大ヒット作品となっているのだ。
『THE FIRST SLAM DUNK』が現象を巻き起こしているのも日本だけではない。2023年1月4日に公開された韓国では、公開当初から興収ランキング1位を独走していた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を超える1スクリーン当たりの動員数をキープしながら2位にピッタリつけていて、遂に1月後半には順位が逆転して興収ランキングでも1位に。2月1日時点で早くも200万人を超える動員を記録している。(※2)同じように香港でも公開2週目で興収ランキング1位を獲得。今後、公開される地域が広がるにつれてさらに世界興収を積み上げていくに違いない。
このように、もはや日本映画、特に日本のアニメーション作品の興行価値については、国内の状況だけを見ていても本当に起こっている重要な地殻変動に気付けない時代に入っている。先週末は半年ぶりに実写映画が1位となったわけだが、今週末には『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』が公開される。今年4月に始まる新シリーズの先行上映が売りに過ぎない今回の『「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』だが、「ワールドツアー上映」と銘打たれているように、既に80以上の国や地域での公開が決定している。
参照
※1. https://variety.com/2023/film/news/japan-box-office-market-1235507695/
※2. https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230201003000882?section=entertainment-sports/index
■公開情報
『レジェンド&バタフライ』
全国公開中
出演:木村拓哉、綾瀬はるか、伊藤英明、宮沢氷魚、市川染五郎、北大路欣也、中谷美紀、音尾琢真、斎藤工ほか
脚本:古沢良太
監督:大友啓史
配給:東映
©︎2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会
公式サイト:https://legend-butterfly.com/
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