『ツルネ』は第2期からでもまだ間に合う! 京アニの真髄が詰まった“つながり”

『ツルネ』は第2期からでも必見

 ピンと張り詰めた静謐な空気の中で、弦音が響き、的に中る(あたる)。「よーし」という掛け声があがると、まるで本当に弓道の試合を観客席から観ているような気持ちになる。1月から放送が開始されたアニメ『ツルネ -つながりの一射-』。今回は第1話、第2話から感じた今作の志向する“つながり”というテーマとその描き方について考えていきたい。

 『ツルネ -つながりの一射-』は、原作者の綾野ことこが手がけたライトノベル『ツルネ -風舞高校弓道部-』のTVアニメの2期目にあたる作品だ。過去にはTVシリーズ第1期と総集編映画『劇場版ツルネ -はじまりの一射-』が制作されている。アニメーション制作は京都アニメーション(以下、京アニ)が務め、監督は第1期に引き続き山村卓也が担当している。

 風舞高校弓道部に所属する主人公・鳴宮湊などの部員たちと、そのライバルである桐先高校弓道部たちの姿を中心とした、青春スポーツ作品だ。ストーリーは、鳴宮湊が弓道にて早気と呼ばれる、十分に構える前に矢を放ってしまうメンタル上の問題を抱えている姿から始まる。しかし、仲間となる部員や弓道の指導者である滝川雅貴との出会いによって、早気を克服しながら全国大会を目指していく。

 京アニ作品は、制作スタジオの名前だけで話題を集めるほどの、高いクオリティが特長だ。今作も映像表現が優れており、弓道という射形の美しさも重要視される競技を扱う上で、現実に即した精緻な模倣となる作画表現と同時に、撮影技術や仕上げによる色彩の美しさによって、映像的な派手さをも兼ね備えている。弓道やアニメに興味がなくとも、第1話冒頭の映像を観ただけでもその魅力がわかるだろう。

 同時になぜこの物語の流れなのか、なぜそのシーンを選択したのかわかりやすく、制作陣がどのような意図を持って制作しているのか、視聴者に通じやすい作品でもある。

TVアニメ『ツルネ -つながりの一射-』ノンクレジットOP/OP主題歌:ラックライフ「℃ 」

 象徴的なのがOPだ。第1期のOPでは湊が、リボンのような糸に右手をがんじがらめにされているシーンが挿入されていた。これは早気にかかり、手が思うように動かないという湊の心情が、第1期の物語の中心だったことを端的に表現している。一方で2期のOPでは、冒頭から湊の手からは色とりどりのリボンが部員たちに繋がっている。これは第1期で早気の問題が一定の解決をみせ、第2期のテーマが湊個人の問題から、チームや集団の問題へと変化したことを端的に示している。

 また第2期の第1話では冒頭から全校スポーツ大会が行われる。日本の高校の部活動といえば、第1話で登場したようなサッカーやフットサル、バレーボールなどが思い浮かぶだろう。また武道では剣道もメジャーな競技だ。第1話冒頭からは、部員である5人の性格などを説明すると共に、彼らが弓道以外のスポーツを選ぶ選択肢もあったことが示されている。

 登場人物たちは別の競技の選択肢もありながら、あえて弓道という、高校の部活動ではマイナーともいえる競技を選択している。その理由として第1話のBパートでは、弓道描写をメインとし、登場人物たちが前出したメジャーな競技にも劣らない弓道の魅力を、セリフの説明と豊かな映像表現で伝えてくれる。

 ここまでの説明を読んで、興味を持ったとしても「第1期から、あるいは劇場版から観なければいけないのか?」と、少し億劫になるかもしれない。もちろんそれが理想ではあるものの、仮に今作から観始めても、その魅力が理解できるよう配慮が行き届いていることが、第2話をみれば伝わるだろう。

 第2話では第1期にて風舞高校弓道部に敗れた、全国大会常連の桐先高校弓道部が中心となる。湊の幼なじみであり、良きライバルでもある藤原愁の妹である沙絵が登場し、弓道の大会を初めて観にいくシーンがある。このシーンが挿入されることにより、沙絵の目を通しながら初めて弓道を知る、あるいは『ツルネ』という作品に触れる人々への案内となる。同時に第1期視聴者にはかつて幼い頃の湊が憧れた弓道の姿と弦音を、現在の風舞高校が体現している様子を通すことにより、彼らの成長を感じさせる作りとなっているのだ。

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