アカデミー賞作品賞は『フェイブルマンズ』が最有力 『RRR』がサプライズを起こす?

 Netflix勢では他に、第3回アカデミー賞作品賞受賞作をドイツでリメイクした『西部戦線異状なし』が国際長編映画賞を筆頭に技術部門でのノミネートの可能性を秘め、ゴールデングローブ賞のアニメーション映画賞を受賞した『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』は長編アニメーション賞の有力候補。ノラ・トゥーミーの『エルマーのぼうけん』やヘンリー・セリックの『ウェンデルとワイルド』も長編アニメーション賞に名を連ねる可能性は持っているが、いずれも作品賞入りを期待するのは酷な話だ。

 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『バルド、偽りの記録と一握りの真実』など、早い段階で有力視されていた作品が相次いで不発に終わり、俳優組合賞で候補にあがった『HUSTLE ハッスル』のアダム・サンドラーと『ブロンド』のアナ・デ・アルマス、『グッド・ナース』のエディ・レッドメインがなんとか主要部門への可能性を繋いだといえよう。

 閑話休題。そんな劇場公開映画の復権、あるいは逆襲のような様相になりつつある第95回アカデミー賞は、例によってドラマ部門各賞のノミネート者と、ミュージカル・コメディ部門の受賞者がさほど変わりなく駒を進めてくる可能性が高そうだ。上位こそ三つ巴で混戦ムードだが、そもそも名乗りをあげる作品がかなり絞られており、ビッグサプライズが起きる気配はほとんどない。少なくとも、ガラリと顔ぶれが変わることはもうないといってもいいだろう。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』©︎2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 ゴールデングローブ賞でははかれない技術部門は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と『トップガン マーヴェリック』が抜群の強さを見せつけるだろうし、ゴールデングローブ賞でもそれなりの存在感を見せた『エルヴィス』は、三つ巴を揺るがす強力なコンテンダーに成長する可能性を秘めている。また、ゴールデングローブ賞に絡まなかった作品としてはA24の『Aftersun(原題)』が伸び盛り。主要部門に滑り込んでくることを期待したい。

『RRR』©︎2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED.

 主要部門への滑り込みといえば、ゴールデングローブ賞主題歌賞を勝ち取った『RRR』は相当の勢いを感じる存在だ。配給会社に賞レースのノウハウがあるとは言い難いが、『パラサイト 半地下の家族』や『ドライブ・マイ・カー』の例を考えればゼロではない。S・S・ラージャマウリが監督賞にでもあがればそれ以上おもしろいことはないし、何よりショーとしても盛り上がる。今年サプライズを起こす台風の目、いや、インドではサイクロンなので“サイクロンの目”は、この作品かもしれない。

■公開情報
『フェイブルマンズ』
3月3日(金)全国公開
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:マーク・ブリッジス
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
配給:東宝東和
©2022 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://fabelmans-film.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp

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