ガンダムファン以外も取り込んだ『水星の魔女』 楽しい学園ドラマの裏に漂う不穏な空気

 令和のガンダム作品として2022年10月より放送が始まった『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が今、佳境を迎えている。本作は、アスティカシア高等専門学園に編入してきた水星出身の少女スレッタ・マーキュリーと、彼女を取り巻く学園の人間模様を描いた異色の“学園ガンダム”である。従来のガンダム作品同様、モビルスーツは登場するものの、それは学園の内部で生徒同士が決闘をする際に用いたり、学校での実技テストの科目で搭乗するなど、他のガンダム作品のような国家間の戦争用兵器とは違う見せ方で描かれている。しかしその一方で、地球生まれのアーシアンと、宇宙移民者スペーシアンとの間に確執があり、両者の分断が一触即発のきな臭さを感じさせ、いつ戦争に発展するかも分からない深刻な状態である。

『水星の魔女』に込められた『ガンダム』の“自由”さ 岡本拓也プロデューサーに狙いを聞く

“ガンダム”とひとくちに言っても、そのシリーズの広がり方は果てしなく膨大だ。原点である『機動戦士ガンダム』(1979年)から始ま…

 リアルサウンドでは放送開始時に本作の岡本拓也プロデューサーにインタビューを行っており、その際に岡本プロデューサーは、ガンダム50周年、60周年に向けて、今までガンダムシリーズに触れてこなかった次世代の若者をターゲットにしたいと話している。タイトルにガンダムと付いているだけでもう観ないという、そんな若者たちに向けて作りたいと。(※)そうした制作陣の狙いは功を奏し、Twitter公式アカウントのフォロワー数は約38万4千人(2022年12月23日時点)と上々で、毎週のテレビ放送時には番組中で発せられた台詞やシチュエーションなどがトレンドに多数入るなど、ここ10年ほどのテレビ、映画のガンダムシリーズと比べても大きな反響があるのが目に見えて分かる。公式アカウントも「毎週たくさんのツイート、本当にありがとうございます!」とファンの応援に答える発信を続けており、制作サイドとファンサイドが相互に良い感じで作品を盛り上げているのが微笑ましい。

 さて、この『水星の魔女』、これまでガンダムシリーズをそれほど熱心に観ていなかった視聴者層&アニメファンをも巻き込んだ規模の大進撃に見えるが、なにがそこまで多くの人を魅了したのか?

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニング映像(ノンクレジット)

 スレッタが気性の激しい子でもなく、とてもフランクで親しみやすい主人公であったこと、転校生の主人公が編入早々、女子に言い寄る嫌な男子生徒を打ち負かすスカッとする掴みで始まったことなど、要因は色々と考えられるが、やはり1番にキャラ立ちの良さが挙げられるだろう。スレッタと並ぶもうひとりの主人公ミオリネ・レンブランの、父親に反発しながら自分の足で立とうとするツンツンした性格とコンプレックス、さらに“学園アニメあるある”な、転校生の主人公に親切にしてくれる穏やかな性格のニカ・ナナウラ、女子を自分のトロフィーとして見ているイキリ系男子のグエル・ジェタークといった個性的なメインキャラクターたち。

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