『コネクト』は三池崇史の持ち味が全開! チョン・ヘインらと生み出した新たな映像体験
チョン・ヘインを主演に迎え、日本の鬼才・三池崇史監督が演出を務めた話題作『コネクト』が12月7日よりディズニープラスにて全6話一挙配信された。
本作は、シン・テソンによる同名のウェブトゥーンが原作で、大ヒットメーカー「スタジオドラゴン」が制作した、三池崇史監督による韓国ドラマ作品だ。是枝裕和監督が『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』でIU(イ・ジウン)、『梨泰院クラス』でイ・ジュヨンに惚れ込み、ソン・ガンホら名優らとともに映画『ベイビー・ブローカー』を作り上げ、カンヌ国際映画祭で2冠の栄誉に輝いたのは記憶に新しい。三池監督も是枝監督も、“鬼才”と呼ばれることが多く、好き嫌いの評価が分かれることが多い作品を生み出すのが特徴のひとつだが、本作で三池監督が韓国俳優と組んで魅せたのは、クライムスリラーだ。
三池崇史らしいバイオレンスな世界観
本作は、不死身の身体を持つ新人類“コネクト”である、チョン・ヘイン演じるハ・ドンスが、臓器ハンターに片目を奪われ、奪われた目が連続殺人鬼に移植されたことを知り、殺人鬼を追う物語だ。本作の演出を担当した三池監督は、暴力性、残虐性、人間の負の側面を、グロテスクさや、エグさといった過激な映像描写で見せるのが持ち味だ。配信先のディズニープラスでは、本作を「史上最大の過激作」「加速するエグさにどこまで耐えられるか」「よりエグイ映像体験へ」とOTT(オンライン動画サービス)全盛時代の新映像体験を謳い煽る。オープニングイントロから、三池監督らしい世界観である“流血”や、おびただしい“目”、身体から触手が伸びるさまなど、背筋が凍るような緊張感をもたらし、これから始まる物語の世界が凄惨であることを想像させる作りだ。
物語は、満月が不気味に輝く夜、疲れと哀しさを内包した孤独感をまとい薄暗く荒んだ路地を歩くドンス(チョン・ヘイン)の大写しから始まる(美しい両目が揃った顔を見られるのはこのあと随分先になってしまう……)。暗闇に向かいどんどん歩いていくドンスだが、この場面を背後から映していて、ハラハラして何かが起こるのではないかと緊張する。車のライトが明るく光り、「きっとここから恐ろしいことが……」という大方の予想通りに物語が急展開し、開始2分ほどで三池監督のバイオレンスの真骨頂が早くも訪れる。
チョン・ヘインが演じる“孤独”な役柄
主演のチョン・ヘインは、韓国で“国民の年下彼氏”と呼ばれ、絶大な人気を誇る。『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』『ある春の夜に』では育ちの良さを感じさせる品の良い甘いルックス、優しい雰囲気を纏うベビーフェイスなのに、元カレ相手に喧嘩っ早い姿や、嫉妬するときに見せる危険さと男の色気を感じさせる目つきなど、かわいさとカッコよさを併せ持つ姿を見せ、多くの女性ファンをヘイン沼に沈没させた。
『刑務所のルールブック』では、ユ・ジョンウ大尉として軍人役を演じ、チョン・ヘインの甘い目とユ大尉の冷たい目、ユ・ハニャン(イ・ギュヒョン)との子どものようなケンカなどコミカルな姿も魅せた。『D.P.-脱走追跡官-』では、同じ軍人役でも、韓国の軍隊の暗部を描き、脱走兵にフォーカスした社会派作品でシリアスな演技を見せた。また、『スノードロップ』では、北朝鮮のスパイという役柄を演じてみせ、スマートで頭がよく、優しく、たくましいというまさに理想の彼氏を体現。鍛え上げた肉体で魅せる銃撃戦のカッコよさと、悲しい恋愛劇に涙する視聴者が大量に発生した。チョン・ヘインは、美しいルックスだけでなく、陰陽を巧みに演じ分けることができる演技力にも定評がある。本作では、胸キュン、恋愛ボルテージを上げる“メロ職人”である恋愛貴公子のチョン・ヘインが、美しい顔を大きな眼帯で覆い、衣装も終始同じもので、華やかさとは両極にある、孤独な“コネクト”を演じた。
三池監督は孤独なドンスを演じるチョン・ヘインに対し、制作発表で「佇まいから、孤独っていうのは演技ではなかなか表現しようがないじゃないですか、チョン・ヘインさんの作品を観ていて思うのは、こんなに美しい人間が孤独でないわけでない、美しい人独特の孤独感を感じて主役は彼しかいない」と語っている(※1)。その美しい姿でスターであるチョン・ヘインが持つであろう孤独さをドンスとして表現できるのを見抜いた三池監督の目論見どおり、ドンスの孤独な佇まいはチョン・ヘインによって見事に体現されている。
ドンスは“コネクト”であることから、幼少の頃から化け物と人々から恐れられ、孤独に暮らしてきた。廃品回収の仕事をする彼は音楽の才能を持ち、自作曲をネットにアップしている。チョン・ヘインの持つキラキラした輝きは消え失せ、特殊な身体を持ち人から拒絶され生きてきたドンスに胸が痛くなる場面が多い。不死身の肉体だが、損傷するたびに苦悩に悶えるドンス。CGによる映像演出で肉体が損傷し、復活するさまがたびたび登場するが、チョン・ヘインが苦しみ歪める表情演技が見事だ。本作でまたひとつ役者としての幅を広げたのではないだろうか。