山崎紘菜、『舞いあがれ!』出演でようやく“発見”される 福原遥らに刺激を与えた倫子役
急展開が続く朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)にて、ヒロイン・舞を演じる福原遥を支え、彼女の手を引くようなポジションを担っている山崎紘菜。女性キャラクターの少ない本作において、山崎が演じる矢野倫子は最重要人物の一人だといえるだろう。映画ファンにとっては馴染み深い俳優だが、ようやくお茶の間でも“発見”されているところなのではないだろうか。
まずは山崎が演じる倫子がどのような人物なのかを整理するところから始めたい。帰国子女の倫子はもともと商社で働いていたが、男性ばかりが優遇される職場で悔しい思いを重ね、思い切ってパイロットになることを決意した人物だ。舞とは航空学校の寮のルームメイトであり、男子だらけの同期のうち、女性は彼女ら二人だけ。最初はなかなかそりが合わなかったものの、気がつけば二人三脚でチームのほかのメンバーを引っ張るような関係にまでなった。
山崎が初登場した第8週というと、脚本・演出が交代し、それまでの作品のトーンとの違いに多くの視聴者が戸惑った週だった。このアクロバティックな制作システムの変更に対する是非は置いておくとして、山崎は目黒蓮らが演じる新キャラクターたちとともに、これでもかというほどの作風の変化を見事に体現していたと思う。なにせ、第8週では舞が航空学校に合格し、入学。さらには同期の者たちとのちょっとした軋轢を経て、みなが「仲間」になっていく過程までがたったの一週間の放送にまとめられていたのだ。時間をかけて各登場人物のキャラクターが描かれていた第7週までとは大きく違い、より個々の俳優それぞれがキャラクターを押し出さねばならぬ“分かりやすい表現”が求められた。
第8週から俳優の演技がオーバーになったのはそのためだろう。しかし、山崎らがこういった演技アプローチに徹することで、主演の福原もそれまでとは異なる演技のスタイルへと移行できたのではないだろうか。こうして途中参加組として、ドラマにおける“新展開”を生み出すことに貢献したわけである。芯がしっかりとした山崎の発声と堂々たるその佇まいは、舞に新たな刺激を与える倫子の人物像として、申し分ない要素を備えているものだったのだ。
本作の公式ガイド『連続テレビ小説 舞いあがれ! Part1』(NHK出版)にて山崎は「ドラマの中で倫子が担うのは、女性が社会で働くうえでの厳しさと、それを乗り越える強さ。物語の舞台である2000年代もそうですし、今もなお、パイロットを目指すのは男性がほとんど。この作品がジェンダーフリーについて考えるきっかけになれたら嬉しい」と、自身のポジションの重要性について語っている。