比嘉愛未主演のドラマ版に受け継がれる原作の魂 『作りたい女と食べたい女』が描く“解放”

『つくたべ』が描く“当たり前”からの解放

 それと似ているのが、「料理上手は家庭的」というもの。お弁当を持参した野本さんが同僚の男性から「いいお母さんになる」と言われるように、ただ好きでやっていること、自分のためにやっていることが、なぜか“男のため”、“家庭のため”に回収される。

 本作はこうした、あるあるとも言える食事にまつわる現象からジェンダーバイアスをあぶりだしていくと同時に、2人が出会うことでそこから解き放たれていく姿を描いていく。野本さんが作りたい時に作りたいだけ作って、春日さんが食べたい時に食べたいだけ食べる。本当の気持ちを誰かに受け止めてもらうことで、“当たり前”に傷つけられた心が癒えて、前よりももっと自分のことを大切にできる。その結果、野本さんと春日さんが気づくのは「自分が誰といたいか」という答えだ。野本さんの答えは冒頭で紹介したモノローグの中にある。

 誰と一緒にごはんを食べたいか、誰と一緒に生きていきたいか。私たちにとっても、野本さんや春日さんにとっても、それくらい何の後ろめたさもなく自由に決められる世界であってほしい。“つくたべ”は先日、『#物語のままで終わらせない』というタイトルで同性婚法制化の実現を目指すチャリティープロジェクトを始動させた。その思いは、比嘉愛未が野本さん、演技初挑戦となる西野恵未が春日さんを演じるドラマにも受け継がれる。これから約3週間、私たちを縛っている“当たり前”がじゅわっと溶けていくような感覚を味わいたい。

■放送情報
夜ドラ『作りたい女と食べたい女』
NHK総合にて、毎週月曜〜木曜22:45~23:00 (全10話)
※全エピソードをNHKプラスでも配信
出演:比嘉愛未、西野恵未、森田望智、中野周平(蛙亭)、野添義弘ほか
原作:ゆざきさかおみ
脚本:山田由梨
音楽:伊藤ゴロー
制作統括:坂部康二(NHKエンタープライズ)、大塚安希(MMJ)、勝田夏子(NHK)
制作:NHKエンタープライズ
制作・著作:NHK、MMJ
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる