夏帆が『silent』に刻んだ名演 視聴者を涙させた芝居の凄みを紐解く

夏帆が『silent』に刻んだ名演

 夏帆が多くの視聴者の涙を誘った『silent』(フジテレビ系)の第6話。本作の折り返しとも言える中盤で、今後の物語、そして視聴者の心を大きく動かしたのは、紛れもなく夏帆がみせた芝居の凄みだった。

 聴力を失い人との交流を拒むようになってしまった想(目黒蓮)の近くで、彼の心に寄り添ってきた奈々(夏帆)。第6話では、ろう者向けの就活セミナーでの想と奈々の出会いが描かれ、想が初めて覚えた手話も明かされた。両手の親指と人差し指で何かをつまむように、2度重ね合わせたそれが意味する言葉は「同じ」。

私は生まれてからずっと悲しいわけじゃない
悲しいこともあったけど
嬉しいこともいっぱいある
それは聴者もろう者も同じ
あなたも同じ

 ドラマを観ていて、音として聞いていないセリフであれ、奈々や想が手話で伝える言葉から、こんなにも刺さるセリフがあるのだと気づいた。声も手話も、一種のコミュニケーションツールでしかないのだ。

 ネット上ではキャストたちの「手話が上手い」というコメントも多く見かける。手話を学んだ経験もあるライターの佳香(かこ)氏は、夏帆の手話のリアルさを評価する。

「第1話から、夏帆さんの手話のテンポや間のとり方、スピードがとても上手なんですよね。想の手話をうなずきながら聞いていたり、手話と連動して自然に変わる表情も本当にリアルです。手話のテンポや勢いから、奈々がおしゃべりなのキャラクターであることが伝わってきます」

 多くのドラマとは違って、声色や発する言葉の抑揚などの表現が制限されているなか、目を奪われたのは夏帆の表情だ。

「夏帆さんは目で語りかける人。これまでの想を見る視線と、奈々が想を思って見る眼差しは全く別物でした。恋愛関係になれなくても、想にとってたったひとり、2人で会う友人でいられた。それってある意味特別枠だったわけで、それで自分は十分だと自分自身に言い聞かせてきたけれど、想が紬(川口春奈)と再会したことによって、そのポジションがなくなってしまった焦りや寂しさから、自分の本心に気付いてしまって蓋ができなくなった。想のことを恋慕っているのが視線からでもかなり伝わってきました。ラストシーンで携帯を耳に当てて、想の顔を覗き込む『私の気持ちに気づいてよ』と言わんばかりのあの表情は圧巻で、息を呑みましたね。夏帆さんの凄みでした」

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