『ザ・トラベルナース』『祈りのカルテ』 医療ドラマはニーズ多様化と群像劇がトレンドに
医療ニーズの多様化と多職種連携の結果、チーム医療はさらに促進される。このことはドラマの世界で群像劇の増加となって現れる。群像劇では数人のメインキャラクターを置いて、それぞれの背景や個性に光を当てることで物語を展開する。近年の医療ドラマを特徴づける最大のポイントである。もちろん海外ドラマ『ER緊急救命室』にはじまり、『医龍-Team Medical Dragon-』(フジテレビ系)、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(フジテレビ系)など同じスタイルのドラマはこれまでもあったが、近年の医療環境の変化によって、より描きやすく取り入れやすい形式として群像劇が定着したといえる。
前述の『コウノドリ』、『ラジハ』、『アンサング・シンデレラ』は診療科や医局のメンバーが個々にピックアップされる点で群像劇の要素があり、やや特殊なジャンルながら『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)も法医学教室に所属する一人ひとりのエピソードが、死因の解明やホームドラマと並ぶもう一つの軸になっていた。夜間救急を舞台に波瑠や岸優太演じる若手医師たちを描いた『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)もあり、医療ドラマのファーストチョイスは群像劇に置き換わったと言っていいだろう。
今期の3作品、『ザ・トラベルナース』、『PICU』、『祈りのカルテ』は医療ニーズの多様化と多職種連携、チームによる群像劇の要素を備えている。スーパーナースが医師をサポートし、患者を生かす『ザ・トラベルナース』は多職種によるチーム医療の一つのあり方を示し、ローカリティに根差し15歳未満の小児患者に特化した『PICU』は、個別の医療ニーズと向き合う。大学病院の医局を回る『祈りのカルテ』は多彩な医療メニューと若手医師の群像劇をうまく折衷している。いずれも現実の変化をトピックとして取り込みながら、個々のキャラクターに光を当てることで物語の豊富なバリエーションを生み出している。医療の課題は山積しており、現実に取材した医療ドラマにおいてこの傾向は当分続くだろう。
■放送情報
『ザ・トラベルナース』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:岡田将生、中井貴一、菜々緒、安達祐実、恒松祐里、泉澤祐希、宮本茉由、野呂佳代、池谷のぶえ、吉田ウーロン太、前原瑞樹、柳葉敏郎、浅田美代子、寺島しのぶ、松平健ほか
ナレーション:遠藤憲一
脚本:中園ミホ
音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子
プロデューサー:峰島あゆみ、大垣一穂、山田勇人、多湖亮太
演出:金井紘、片山修、山田勇人
制作協力:ザ・ワークス
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/the_travelnurse/