『鎌倉殿の13人』小栗旬、義時として恐ろしいまでの変化 政子&泰時の覚悟の眼差しも

『鎌倉殿の13人』政子&泰時の眼差しの変化

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第42回「夢のゆくえ」。源実朝(柿澤勇人)は強大な義時(小栗旬)に対抗するため、後鳥羽上皇(尾上松也)を頼る。実朝は何事も人任せにせず、自分で判断することを決意し、泰時(坂口健太郎)をそばに置いて政を進める。一方、鎌倉内での地位を盤石なものとした義時が実朝らをけん制する。

 第42回で目に留まったのが、義時に異を唱える泰時と、頼朝(大泉洋)の思いを引き継ぎ、鎌倉を引っ張っていく覚悟を決めた政子(小池栄子)、2人の眼差しである。

 実朝の強い要望により、泰時は側近として評議に加わった。側近となった泰時は、けん制する義時に決して怯まない。緊張感が漂う面持ちにも見えたが、泰時が「父上が義理の弟というだけのことで頼朝様のおそばにお仕えしたのと同じです。私も鎌倉殿のいとこということでここにおりますが、何か」と切り返したとき、義時の顔を見据える目つきは父・義時に似ていた。

 泰時は義時とは心情が相異なるが、父の背中を見て政治観を養ってきた。鎌倉が激動する中で、泰時は義時のやり方に疑問を抱きながらも、義時の立ち回り方をよく見ていたに違いない。義時に対抗するための立ち居振る舞いだけでなく、義時や三浦義村(山本耕史)によって先手を打たれたときの視線の落とし方、実朝と源仲章(生田斗真)、陳和卿(テイ龍進)のやりとりを注意深く観察し、仲章に不審な点を感じとる表情もまた、頼朝に仕え続けてきた義時の顔つきを思い出させるものがあった。

 物語終盤、実朝は外から養子を取ると言い出した。義時は、鎌倉殿は代々源氏の血筋から出ていると待ったをかける。「鎌倉殿は源氏と北条の血を引く者が務めてきました。これからもそうあるべきです」と訴える義時に、泰時は「執権殿はご自分の思いどおりに事を動かしたいだけなのです」とこれまで以上にはっきりと父への異議を唱えた。泰時は「鎌倉は父上一人のものではない!」と声を荒らげた後も、義時を強い目つきで見据え続けていた。泰時は、少しずつだが確実に、義時と対等に立ち向かう力を付けている。

 伊豆にいる時政(坂東彌十郎)と再会したとき、泰時は穏やかな笑顔を見せる。しかし「政を離れて久しいが今が一番幸せな気がする。力を持つってのはしんどいなあ」という時政らしい純粋な言葉に、泰時は言葉を返せなかった。言葉に詰まったように口をつぐみ、なんともいえない表情を浮かべていた泰時は何を思っていたのだろうか。力を持ち、独裁的な行動をとる父・義時を思い浮かべていたのか、それとも、義時もまた、時政と同じような苦しみを抱えているのかもしれないと考えていたのか。

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