『クロサギ』平野紫耀に自身を重ねる山本耕史 物語を豊かにする詐欺師間のパワーバランス

 11月4日に放送された『クロサギ』(TBS系)第3話。おそらく視聴者の多くが、放送直後に飛び込んできたあまりにも突然の発表に呆然としてしまっていることと思うが、ここではとりあえず黒崎としての平野紫耀を見ることに徹しようと思う。今回は『クロサギ』には欠かすことのできないキャラクターである白石(山本耕史)の本格的な登場を契機に、この2022年版の大きなポイントとなる宿敵・御木本(坂東彌十郎)との対決へ繋がる重要なエピソードだ。

 突然アパートにやってきた神志名(井之脇海)から殴られ、「必ず逮捕する」と宣言された黒崎(平野紫耀)。新たなターゲットに据えたのは、知的財産詐欺で300人以上の顧客に権利を売りつけている西岡崎(栗原英雄)というシロサギ。早速ビジネスの話を装って接触する黒崎だったが、そこに西岡崎の会社の海外戦略担当で弁護士だという白石が現れる。持ちかけた話を程よく断られてしまった黒崎は、西岡崎を喰うための大きな足枷となりかねない白石の動向を探ることに。一方、黒崎の過去を知った氷柱(黒島結菜)は、黒崎への態度が変わり始めるのである。

 2006年版の時には加藤浩次が演じていた白石という“特別なシロサギ”。当時の氷柱役を演じていた堀北真希の夫である山本が、今回この役に配役されるというだけでも面白い縁を感じるのだが、いずれにせよこのどこか浮世離れしたキレ者ぶりを見ると、どうしたって『シン・ウルトラマン』のメフィラスのイメージが付きまとってしまう。それはさておき、白石はとある大企業のせいで家族を失った過去を持ち、その復讐のために腐った大企業だけを相手に詐欺を働くという。つまり黒崎とかなり似通った境遇の持ち主というわけだ。

 西岡崎を利用して別の大企業を潰そうと画策していた白石の前に黒崎が現れたことで、彼は黒崎に手を組むことを提案する。しかし黒崎の返事は「嫌だね」の一言。さらに黒崎は自分が西岡崎を喰うことに協力するよう提案し返すのである。もっぱら今回は、黒崎vsシロサギではなく、黒崎と白石の関係に重きが置かれる。後々わかるのは、白石が狙っていた大企業は桂木(三浦友和)がマネーロンダリングに使用していた会社。桂木は白石を止めるために、あえて黒崎を仕向けたというわけだ。この辺りの人間関係、桂木を絶対的トップに置いた上でもまだまだ複雑な詐欺師間のパワーバランスは、間違いなくこのドラマの筋書きやキャラクター設定を豊かにしている。

 白石の過去を知った黒崎と同様、白石も顔に出さずとも黒崎に自分自身を重ね合わせていると予感できる、終盤の二人のやりとり。白石はそこで、黒崎に御木本の居場所を教えようとしつつ、こう告げる。「御木本に詐欺をやめさせるには、あいつの命を絶つしかない」。早くも次回、御木本と黒崎の直接対決が訪れるわけだが、この不穏な言葉が何を意味するのか。ドラマ前半の大きなクライマックスとして期待しておこう。

■放送情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎(特別出演)、三浦友和、
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/

関連記事