モリコーネ音楽に“生”で触れる機会を見逃すな! 魂を揺さぶる特別コンサート

モリコーネの“息子”たちの思いが結実したコンサート

 親子のコラボレーションは今回が初めてではない。過去にアンドレアは『ニュー・シネマ・パラダイス』の「愛のテーマ」を父と共作していた。当時のことをアンドレはこんなふうに振り返る。

「ある朝、父から電話があって、映画のサントラに曲を書いてみないか、と誘われたんです。そして、映画のシーンについて説明してくれました。そして、私は自分のスタジオで、ピアノに向かっていっきに曲を書き上げたんです。その楽譜を見せると父はとても喜んでくれて、楽譜に〈この曲をラストで4回リピートすること〉と書き込みました。私は『ニュー・シネマ・パラダイス』のサントラに参加できたことに感激しましたが、それ以上に父が曲を気に入ってくれたことが嬉しかった。父は私が書いた曲を心から愛してくれたようで、その後も折に触れて曲について話をしてくれました」

 思えば、『ニュー・シネマ・パラダイス』は、父親を戦争で失った少年、トトと、映写技師のアルフレードとの親子のような関係を描いた物語。2人を繋いだのは映画に対する愛情だった。そんな作品のサントラを手掛けていたモリコーネが、息子に曲を書かせたというのも感慨深い。この思い出の曲はコンサートで演奏される予定で、『エンニオ・モリコーネ「オフィシャル・コンサート・セレブレーション」』は、「音楽をめぐる父と子の物語」でもあるのだ。

 モリコーネには3人の息子がいるが、そのうちの一人、マウロも今回のコンサートにマネージメントとして参加している。アンドレア同様、マウロも子供の頃から音楽に向き合う父親の姿を見てきた。「仕事をしている父を見るのは、もうひとつの父の人格を見ているようでした」と、マウロは子供の頃を振り返る。

「特に私が覚えているのは、父がどんな風に閃きを得ていたかです。父はいつも紙切れとペンを持ち歩き、思いついたらすぐにアイデアを書き留めていました。時には外から聞こえてくる雑音からインスピレーションを得て、それを音楽にしていた。フランスでパトカーのサイレンを聞いて、そこから閃いて曲を書いていたこともあったんです」

 そして、マウロは父同様に、コンサートで指揮をするアンドレアに絶大な信頼を寄せている。

「父の望みは、自分が書いた通りの形で曲が演奏されること。なぜ、そういうふうに曲を書いたのか、そこには深い理由があるんです。アンドレアは熟練した技術を持っていますから、最高の仕事をしてくれるでしょう」

 コンサートに参加するベース奏者で、マエストロと30年以上一緒に仕事をしたナンニ・チヴィテンガも、アンドレアの才能を高く評価している。ナンニはモリコーネとの思い出を振り返りながら、今回のコンサートに対する想いをこんなふうに語った。

「私にとってエンニオは天才であり、彼と関われたことは幸福でした。エンニオは人間的には素朴でしたが、仕事には厳しい人でした。コンサート中に、観客が音楽以外に気が散ることを嫌がったんです。そんな彼が、今回初めてコンサートで映像を使うことを発案した。ですから、このコンサートでは音楽同様に映像がとても重要で、音楽と映像を完璧にシンクロさせています。そこで指揮をするアンドレアは優秀な指揮者であり、父親の曲を完璧に理解していているので、オリジナルのアレンジを忠実に再現することができるでしょう。これはとてつもないコンサートです。私はマエストロのファンの皆さんに言いたい。絶対にこの機会の逃さないでください、と」

 偉大な作曲家が残したレガシーを、その息子が最大の敬意と愛情を持って受け継ぐ『エンニオ・モリコーネ「オフィシャル・コンサート・セレブレーション」』。それはコンサートという枠を超えた特別な体験であり、音楽で作り上げる壮麗なモニュメントと言えるかもしれない。ちなみにコンサートで演奏される予定の曲のなかで、アンドレアが特に気に入っている曲は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)の「デボラのテーマ」だとか。「この曲は父にしては珍しく弦楽器のみで描かれています。驚くほど美しい曲で、奥深くまで澄み切っていて、聴くたびに魂を持っていかれるのです」と絶賛する。観客もまた魂を奪われるほどの感動と興奮を、コンサートで味わうことができるに違いない。

■公演概要
エンニオ・モリコーネ『オフィシャル・コンサート・セレブレーション』
英タイトル:Ennio Morricone - The Official Concert Celebration in JAPAN
11月5日(土)16:00開場/17:00開演
11月6日(日)【昼】11:00開場/12:00開演 【夜】15:30開場/16:30開演
会場(両日とも):東京国際フォーラム・ホールA
出演
指揮:アンドレア・モリコーネ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:レアンドロ・ピッチョーニ
ドラム:マッシモ・ダゴスティーノ
ベース:ナンニ・チヴィテンガ
ギター:ロッコ・ジファレッリ
ソプラノ:ヴィットリアーナ・デ・アミーチス
合唱指揮:ステファノ・クッチ
合唱:GLORY CHORUS TOKYO
●チケット価格(税込/全席指定)
S席:15,000円 / A席:13,000円 / 学生席:5,000円
★各プレイガイドにてチケット販売中
・チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/morricone/
・イープラス:https://eplus.jp/morricone/
・ローソンチケット:https://l-tike.com/morricone/
・楽天チケット:https://r-t.jp/morricone
・CNプレイガイド:https://www.cnplayguide.com/morricone/

演奏予定曲目/( )=日本公開年度・製作国※本文は製作年
『続・夕陽のガンマン』(1967年/伊独西米)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年/米伊)
『アンタッチャブル』(1987年/米)
『ミッション』(1987年/英仏米)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989年/伊仏)
『海の上のピアニスト』(1999年/伊)
『マレーナ』(2001年/伊米)
『ヘイトフル・エイト』(2016年/米)ほか
※曲目は変更になる場合あり

©Jelmer de Haas - All Rights Reserved
公式サイト:https://www.promax.co.jp/morricone/

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