『舞いあがれ!』挑戦をし続ける登場人物らの力強さ 横山裕演じる兄の帰還は“フラグ”?
みんな、それぞれの道で頑張っている。連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)第17話は、力強く邁進する周囲に対して、舞(福原遥)が感心する様子が描かれた。
無事に「なにわバードマン」に入った舞は、先輩の由良(吉谷彩子)の特訓を見守りながら、女性がパイロットを務めることに少し驚く。サークルのメンバーも由良以外は男性で、そういった分野での女性の活躍を肌で感じるのが彼女にとっては初めてだったから。この先輩の存在が、のちに舞がパイロットを目指す上での指針になるかもしれない。
厳しいトレーニングを脇目も振らずに頑張る由良を1メートルでも先に飛ばすために、良い飛行機を作ってあげたいというサークルメンバーの思い。ここにも、本作の随所に登場する「誰かを想うものづくり」の精神が表れている。しかし、残念なことに目標として頑張っていたイカロスコンテストの書類審査に落ちてしまい、出場ができなくなってしまった。
イカロスコンテストのモデルと考えられる実際の鳥人間コストも、書類審査が高い倍率で厳しいらしく、何より落選の理由も開示されないのだとか。「なにわバードマン」のメンバーも、落選理由を推測してみるが答えはわからないまま。3回生にとっては、このまま引退することになってしまう。
しかし、落ち込んだままではいられない。サークルの代表であり、3回生の鶴田(足立英)が記録飛行に挑戦することを提案。すかさず、人力飛行機の設計担当である刈谷(高杉真宙)が、1987年にアメリカでライトイーグル号の乗ったルイス・マッコーリンが打ち出した、女性パイロットの世界記録15.44キロメートルの記録を打ち破ろうと言う。由良もすぐに挑戦したいと答え、チームは落ち込む暇もないまま、さらなる高みを目指すことになった。町工場も、いろんなものづくりに関わっている人も、こんなふうにダメになってしまったことがあってもできることを探そうと腐らずに前を見るのだろうと思うと、その姿にわたしたちも背中を押されるものだ。
舞も、一緒に由良を飛ばすために良い飛行機を作りたいと思うようになった。その気合は部費を稼ぐために入った、久留美(山下美月)のバイト先でも発揮される。時給は750円、2004年当時の大阪の最低賃金は704円であり、現在は1023円まで引き上げられている。
舞の父・浩太(高橋克典)の工場もこの10年で順調に成長していた。新しい機械を増やし、ネジを材料から作る工場になり、従業員も増えて工場が二つになっている。何より、経営の起死回生のきっかけとなった特殊ネジの製造依頼も順調に増えている。以前はめぐみ(永作博美)が一人で会社の雑務をこなし、家事や子育てと重なってしんどそうだったが子供たちも巣立ち、会社でも部下ができるなど安定した形で今は総務兼経理として夫を支えている。みんな一人で頑張っていたが、今は誰かと一緒に頑張れる状況になっているのが安心する。
浩太は新しい機械の導入や、コーポレート・アイデンティティなど、以前に比べて新しいものに挑戦することに抵抗を感じなくなったようだ。CIの略称で知られるこの概念は1990年代にかけて様々な企業が導入していたが、その後2000年頃を境に再び「ブランディング」という新たな戦略概念として浸透しており、一種のブームとなった。浩太はまさに、その渦中にいるのだ。