『PUI PUI モルカー』が描く社会的なテーマ 続編『DRIVING SCHOOL』に感じた可能性

 2021年にテレビ東京系列で放送されるや、大反響を呼んだTVアニメ『PUI PUI モルカー』。その続編シリーズ『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』がついに始まり、第1話「ビル倒しちゃった!」、第2話「白塗りモルカーの逆襲」までが放送された。

 ここでは、そんなエピソード序盤の『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』シリーズの内容を振り返るとともに、この時点で作品がわれわれにもたらすものや、今後につながるかもしれない要素について考察していきたい。

 「モルカー」とは、モルモットと乗用車が一体となった生物。人間たちがそれらを交通手段として利用している世界を舞台に、さまざまな種類のモルカーたちが活躍するのが、『PUI PUI モルカー』の内容だ。

 注目すべきは、本作の制作手法が、『ピングー』や『ウォレスとグルミット』などと同様の「ストップモーション・アニメーション」であるということ。これは、粘土や人形などを少しずつ動かしながら写真を撮っていくというものだ。ちなみにモルカーたちは、あたたかみのある羊毛のフェルトで造形されている。

 さまざまなモルカーたちのかわいらしい見た目と、意外に毒を含んだ描写のギャップは、視聴者の心をつかみ、SNSや口コミで大きな反響を生むこととなった。この点は、漫画、アニメシリーズ『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』と同様の人気の広がり方だといえるだろう。

 この人気に応え、TVシリーズの総集編は映画版として公開され、3D、4DXなどの上映形式で楽しまれるほどだった。その内容については、「『PUI PUI モルカー』劇場版の存在意義とは? 鑑賞体験を通して考えるシリーズの魅力」に書いた。

『PUI PUI モルカー』劇場版の存在意義とは? 鑑賞体験を通して考えるシリーズの魅力

子ども番組の1コーナーとして、3分未満の枠で放送されたにもかかわらず、多大なインパクトを与え、熱狂的な人気を獲得したTVアニメー…

 ここまでの人気を得てしまうと、TV局も映画業界も、ソフトの販売やグッズの展開をするビジネスの立場においても、次々に新作を供給したいというのが正直なところだろう。しかしアニメ作品は、スタッフを多くすれば多くしただけ早く作れるというものではない。とりわけストップモーション・アニメーションは、現在でもアナログでの作業が多いため、効率化、量産化にはとくに適していないといえる。

 また、前シリーズ同様に少数精鋭のクリエイターが時間をかけて手がけなければ、クオリティを維持することが困難だという事情もあるだろう。だからこそ、そんな本シリーズが、制作体制を大きく変化させずに帰還したことには、大きな意味があるといえるのだ。

 「モルカー」という生物の存在を描くだけでも奇想天外ではあるが、前シリーズではゾンビが発生したり、原始の時代にタイムスリップするなど、さらに常識を逸脱した荒唐無稽な展開が用意されていた。しかし、この続編シリーズでは、そのタイトルの通り「ドライビングスクール」が舞台になるという。これは、作り手自ら世界観を小さくするという意味で、かなり意外なアイデアだといえよう。

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