高畑淳子「失敗ばすっとは悪かこっちゃなか」 『舞いあがれ!』孫&祖母の優しいまなざし
『舞いあがれ!』(NHK総合)第8話では、舞(浅田芭路)は瀬渡しの仕事が入った祥子(高畑淳子)と一緒に船に乗る。東大阪では、めぐみ(永作博美)が14年前の出来事を思い出していた。浩太(高橋克典)が、五島では舞が聞き手となり、めぐみと祥子の心境が語られた。
めぐみは舞と離れ、どこかホッとする気持ちを感じており、「私、冷たい母親なんかな……」と後ろめたい気持ちを抱えていた。駆け落ち同然で結婚しためぐみは、当時、母・祥子を見返すことばかりを考えていたという。しかし祥子と15年ぶりに再会したとき、離れていた時間の分だけ年老いた母を見て、肩の力が抜けたと話す。浩太が「舞、預かってくれはったんは、頑張りすぎてるめぐみを楽にするためかもな」と言うと、めぐみは安心したようにふっと微笑んだ。
一方、舞は祥子に「おばあちゃんはず〜っと待ってたん? お母ちゃんが帰ってくんの」「それか、お母ちゃんのこと嫌い?」と問いかける。過去の出来事に口を濁す祥子だが、めぐみを嫌ってなどいない。めぐみと再会したあの日、フェリーから降り立っためぐみと舞の姿を見つけた祥子が思わず涙ぐんでいたことが明かされた。「嫌いなわけがなか」「待っとったよ」「めぐみに会いたかった」舞の目を見て、祥子ははっきりと思いを口にした。
めぐみと祥子は折り合いが悪く、今はまだ、顔を合わせて素直な気持ちを言葉にするのは難しいのかもしれない。けれど、浩太の言葉と舞の純粋な問いかけがめぐみと祥子のお互いを思う心を少しずつ解きほぐしている。
第8話では、祥子と舞の関係も魅力的に描かれた。祥子は舞と一緒にばらもん凧を作っていたが、夢中になるあまり、瀬渡し船で迎えに行くはずの時間に遅刻してしまった。「失敗ばしてしもた」と落ち込む祥子の手を、舞は優しく握る。「おばあちゃん、失敗は悪いことやないんやろ?」と舞は心配そうに声をかけた。
五島へ来てから、舞はさまざまなことに挑戦し、たくさん失敗をしてきた。しかし祥子は舞の失敗を咎めることはなく、「失敗ばすっとは悪かこっちゃなか」と舞を励ます。そのおかげで、舞はたくさん失敗しつつも自分でできることが少しずつ増えてきた。「失敗は悪いことではない」と知った舞だからこそ、失敗して気落ちする祥子を元気づけようとしたのだと思う。舞の優しさに触れ、祥子はやわらかく微笑んだ。落ち込んだ気持ちを和らげるように、舞と祥子がお互いを抱きしめる場面は、失敗したときに寄り添ってくれる人の存在がどれほど大きなものかを感じさせてくれた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK