『ドント・ウォーリー・ダーリン』スキャンダル乗り越え北米No.1 『アバター』も人気健在
北米週末興行ランキングに、ようやく日本公開予定のある話題作が戻ってきた。9月23日~9月25日の3日間で首位をつかんだのは、ワーナー・ブラザース製作『ドント・ウォーリー・ダーリン』(日本公開は11月11日)。フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、クリス・パインらの共演、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)のオリヴィア・ワイルド監督による第2作とあって大きな注目を浴びていたスリラーだ。
日本公開予定のある新作映画がランクインしたのは、8月19日~21日に初登場した、イドリス・エルバ主演の『ビースト』以来なので実に5週間ぶり。この間も『The Invitation(原題)』や『Barbarian(原題)』などがランクインしてきたが、どれも具体的な公開の目処が立っていない状況だった。
『ドント・ウォーリー・ダーリン』のオープニング興行収入は3日間で1920万ドルと、製作費3500万ドルの中規模作品としては上々の滑り出し。チケットの前売りセールスが伸びていたことから、2000万~2400万ドルも視野に入っていたが、この予測にはもう一歩届かなかった。海外興収は1080万ドルで、世界累計興収は3000万ドルとなっている。
日本国内の宣伝では「ユートピアスリラー」と称される本作では、フローレンス・ピュー演じるアリスが、夫のジャック(ハリー・スタイルズ)とともに、どこか懐かしさを覚える街で“完璧な生活”を送っていたところ、周囲で奇妙な出来事が起こり始める。飛行機の墜落事故、隣人の失踪、そして“立入禁止区域”の謎。街そのものに疑問を抱きはじめたアリスは、精神に異常をきたしていると思われはじめ……。
本作の評価は賛否両論まっぷたつで、Rotten Tomatoesでは批評家スコア38%、観客スコア79%を記録。出口調査に基づくCinemaScoreでは「B-」評価を得た。もっとも若年層の評価は高く、全体の16%を占める18歳以下の観客のみに限れば「A-」評価となっている。ただし専門家の間では、本作の好調はハリー・スタイルズの人気によるところが大きいと見られており(なにしろハリーにとっては『ダンケルク』(2017年)以来の本格出演作だ)、評価面を鑑みても年長の観客層にこれから強く訴求するのは難しそうだ。興行の推移も公開直後に観客が集中する傾向にあるため、口コミやリピーターの効果がどこまで現れるかがカギとなる。
ともあれワーナーやプロデューサー陣は、『ドント・ウォーリー・ダーリン』の初動成績にほっとしたことだろう。なにしろ本作は、製作中から公開直前までスキャンダルが絶えなかった一作だ。当初はシャイア・ラブーフが出演予定だったが降板し、ハリー・スタイルズが後任者に決定していた(のちに監督はシャイアのスタイルが自分の要求に合わなかったためだと述べたが、ラブーフは稽古時間が不足したための自主降板だと主張している)。
また、撮影中からピューとワイルド監督の間に確執があった。それはスタイルズとの関係をめぐるトラブルゆえだと報じられたり、のちにスタイルズと監督の交際が発覚したり、ヴェネチア国際映画祭ではスタイルズがクリス・パインに唾を吐きかけたと話題になったり(のちに事実無根だと明言)と、とにかくタブロイド紙やSNS上の話題には事欠かなかったのである。ただし、こうしたスキャンダルは興行面に大きなダメージを与えなかったようだ。
『ドント・ウォーリー・ダーリン』は、先週No.1だった歴史映画『The Woman King(原題)』との対決がどうなるかが期待されてもいた。結果はどちらも1900万ドル台のスタートとあって、まさに五分五分というところ。後者は首位を譲って今週は第2位にランクインし、3日間で1114万ドルを記録した。前週比-41.5%という比較的粘り強い下落率は、批評家や観客からの高評価の賜物だろう(詳細は先週の記事を参照のこと)。北米累計興収は3629万ドル、ここからの推移にも注目だ。
第3位は『アバター』(2009年)を最新技術でリマスターし、新たなシーンを追加した『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』。世界興収歴代No.1の圧倒的人気ぶりは健在で、北米での公開規模は1860館と決して大きくないものの、3日間で1000万ドルを稼ぎ出した。海外では日本を含む50市場で公開され、2050万ドルを記録。今回の再上映における世界累計興収は3050万ドルとなっている。
ディズニー/20世紀スタジオは、『アバター』の13年ぶりとなる続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を12月16日に日米同時公開予定。『アバター』リマスター版の再上映は続編に向けてのプロモーションの一環だが、まずは順調な滑り出しと言える。年末の“本番”では、いったいどこまでの興行収入を叩き出すことになるだろうか。