実在した修道女の数奇な運命描く ポール・ヴァーホーヴェン新作『ベネデッタ』公開決定

ポール・ヴァーホーベン『ベネデッタ』公開へ

 ポール・ヴァーホーベン監督最新作『Benedetta(原題)』が、『ベネデッタ』の邦題で2023年2月に公開されることが決定した。

 本作は、実在した修道女ベネデッタの数奇な運命と彼女に翻弄される人々を描いたセクシュアルサスペンス。17世紀に実在した女性、ベネデッタ・カルリーニはレズビアン主義で告発された修道女。幼い頃から聖母マリアやキリストのビジョンを見続け、聖痕が浮かび上がりイエスの花嫁になったと報告して信者の注目を集め、民衆の支持を得て修道院長に就任した女性である。ヴァーホーベン監督は、この歴史上初のレズビアン裁判記録『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』(J.C.ブラウン著・1988年)を読みベネデッタの人物像に魅せられ、本作を映像化した。

 ヴァーホーベンは、『氷の微笑』(1992年)のシャロン・ストーン、『ショーガール』(1995年)のジーナ・ガーション、『エル ELLE』(2016年)のイザベル・ユペールなど、男性も女性も虜にしてきた予測不能な女たちを映し出してきた。本作でカルリーニを演じたのは、フランスの国民的女優であり、日本では『おとなの恋の測り方』(2016年)、『エル ELLE』で知られるヴィルジニー・エフィラ。彼女がカルリーニを演じた本作は、2021年に行われた第74回カンヌ国際映画祭にて初上映された。

 さらに、ヘルムート・ニュートンやフランソワ・オゾンのミューズから世界的大女優となったシャーロット・ランプリングは「この映画に出演しない理由が見当たらない」と、宗教をビジネスとしてしかとらえていない修道院長を底知れない無表情で演じた。また、歌手兼俳優として活動するフランスの大スターのランベール・ウィルソンが演じたのは、危険で威嚇的で欲にまみれた“悪党”の教皇大史。ギリシャの女優ダフネ・パタキアが演じたのは、家庭内性暴力の被害者で聖女ベネデッタを破滅に導くきっかけとなる、ヒロインの相手役のバルトロメア。

 17世紀のペシアの町(現在のイタリア・トスカーナ地方)で、幼い頃から聖母マリアと対話し奇蹟を起こす少女とされていたベネデッタは、6歳で出家しテアティノ修道院に入る。純粋無垢なまま成人したベネデッタは、ある日修道院に逃げ込んできた若い女性バルトロメアを助ける。様々な心情が絡み合い2人は秘密の関係を深めるが、同時期にベネデッタが聖痕を受けイエスに娶られたとみなされ、新しい修道院長に就任したことで、周囲に波紋が広がる。民衆には聖女と崇められペシアでの権力を手にしたベネデッタだったが、彼女に疑惑 と嫉妬の目を向けた修道女の身に耐えがたい悲劇が起こる。そして、ペスト流行にベネデッタを糾弾する教皇大使の来訪が重なり、ペシアの町全体に更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていた。

 本作は、10月に開催される京都ヒストリカ国際映画祭にて1回のみ先行上映される。

ポール・ヴァーホーベン監督 コメント

ベネデッタの物語の独特な性質に惹かれたんだ。17世紀初めにレズビアンの裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なことにも感銘を受けた。そしてこの時代、女には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、子供を産むだけの存在とみなされていたにもかかわらず、ベネデッタが手段はどうあれ、完全に男が支配する社会で、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性だったという点だ。私の映画の多くは女性が中心にいる。つまり、ベネデッタは『氷の微笑』、『ショーガール』、『ブラックブック』、『エル ELLE』のヒロインたちの親戚というわけさ。

■公開情報
『ベネデッタ』
2023年2月17日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーヴェン
原案:ジュディス・C・ブラウン『ルネサンス修道女物語―聖と性のミクロストリア』
出演:ヴィルジニー・エフィラ、ダフネ・パタキア、シャーロット・ランプリング、ランベール・ウィルソン
配給:クロックワークス
2021/フランス・オランダ/131分/R18+/原題:Benedetta
©︎2020 SBS PRODUCTIONS - PATHÉ FILMS - FRANCE 2 CINÉMA - FRANCE 3 CINÉMA
公式サイト:https://klockworx-v.com/benedetta/

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