『メイドインアビス』第2期も終盤に向けてさらに加速 小島正幸監督の凄みを制作陣に聞く

『メイドインアビス』渾身の第10話を聞く

第10話は素晴らしい出来

――小出さんはアクションシーンの演出・作画でアニメファンから支持されている方だと思いますけど、ご自身でもやはりアクションにこだわりがあるんでしょうか。

小出:作画という点でいうと、実はアクションはあまり好きじゃないんです。入社したばかりの頃にアクションをやっちゃったから、やり続けているという感じで(笑)。別に作画が嫌いなわけではないんですけど、元々演出志望で入社したので、こんなにアニメーターを続けると思っていませんでした。ですので、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』で演出をやれてよかったですし、今後もできれば演出でいきたいと思っています。

――本作の本編では演出・絵コンテは担当されていないのですか?

小出:本編は、第10話の絵コンテをやらせてもらいました。

――原作の流れとその話数からすると、山場のアクションが多いエピソードなのでは?

小出:そうですね。結局アクション多めの話数をやっているんですが(笑)。でも、小島監督の作品で演出をやらせていただけて嬉しかったです。

『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第10話

山下:第2期の絵コンテは、小島監督だけで10話分くらい描いています。というか、基本的に小島監督じゃないと描けない作品なので、ここに描ける人がいるのは実はすごいことなんです。この作品は、いきなり外部の方を連れてきても描けるものじゃないんです。

小出:設定が膨大ですからね。僕も中で作業していて、小島監督の絵コンテを見てきたから描けるんです。

山下:第10話の出来は素晴らしいですよ。楽しみにしていてください。

小出:僕は、小島監督が担いできた神輿にそっと乗らせてもらっただけなので、ちゃんと良いものになっていればいいなと祈る気持ちです。

『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第10話

――ほとんどの話数を小島監督がコンテ切る中、第10話を小出さんにお願いしたのは、何か意図があるんですよね。

小出:どうなんでしょう。多分、アクションが多いからかな。

山下:劇場版の時から、小島監督はアクションが多い回は誰かにお願いしたいと言っていて、何人かオファーしていたんですが、最終的に小出さんに決まったという経緯です。アクションだけじゃなく、過去のレグとファプタが出会うエピソードでもあるので、感情面の演出もやってもらいたいと思ってのオファーです。

売れる作品と売れない作品の差が増大するアニメ業界

――ここ数年のアニメ業界の変化についてお聞きしたいのですが、コロナ禍以降、キネマシトラスさんの環境はどう変化していますか?

小出:リモートで仕事する人はかなり増えましたし、紙で作業していた方もかなりデジタルに移行しています。

――キネマシトラスさんは、デジタル化が割と早かった方ですよね。

小出:そうですね。新人で紙で描く人はいませんし、教えるのもデジタルです。しかし、アニメを1シリーズ、2シリーズ並行して制作すると、デジタルだけでは人材が足りなくなるし『アビス』のようなタイトルですと、紙で上手なベテランの方にも入っていただくので、まだ紙とデジタルのハイブリッドです。

『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第9話

黒田:私の場合、紙だと勢いで描けて楽しいです。一方、デジタルは細かいところまで見て描けるので、これはこれで楽しいので、どっちにも良い部分があります。

――黒田さんは紙とデジタルを使い分けて仕事されているのですか。

黒田:基本的にはデジタルで、作画監督の作業時は、紙で上がってくるものは紙で直して、デジタルの場合はデジタルで見る感じですね。最終的な原画修正はデジタルでやりました。さっきも言ったようにデジタルは細かいところまで見られるので、その分時間をかけてしまいます。

小出:デジタルはいくらでも画面をアップにできてしまうし、無限に直せるので「もうこれでいいや」みたいな思い切りが出せないんですよね。だから、デジタルの方が時間がかかる人は多いと思います。それはデジタルの良い点といえば良い点なので、難しいところです。功罪あるとは思いますが、間違いなく100%デジタルに切り替わっていくとは思うので、コロナ禍で増えたリモート作業でそれが加速したことは自然なことだと思います。

山下:プロデューサー視点では、コロナ禍でアニメの売上が大きく下がったということはなく、リアルイベントなどは厳しい状況でしたが、逆にアニメは家でも楽しめるエンタメですから、全体で見れば影響は少なかったです。

――山下さんは今後のアニメ業界について、どんな展望をお持ちでしょうか?

山下:コロナ禍でネガティブな面があったとすれば、自分たちで新しく好きになれるものを発掘するより、みんなが良いと言っているものに乗っかったほうが楽という価値観が拡がったような気がすることです。その結果、売れる作品と売れない作品の差がものすごく激しくなっています。『メイドインアビス』もそうなんですけど、人気作の続編がお客さんを囲い込んでいる状況なので、そうなると、新しい作品をどう生み出すのかという課題があります。アニメは輸出産業という話をしましたが、海外のお客さんの方が情報ゼロの状態で作品に接してくれる人が比較的多いですから、そういう意味でも海外市場が広がるのは大事かもしれないですね。国内と海外、上手く良いとこ取りができるといいなと思います。

参照

※1. https://media.comicspace.jp/archives/11896

■放送情報
『メイドインアビス 烈日の黄金郷』
AT-X:毎週水曜22:30〜
(リピート放送:毎週金曜10:30〜/毎週火曜16:30〜)
TOKYO MX:毎週水曜25:05〜
BS11:毎週水曜25:00〜
サンテレビ:毎週水曜25:05〜
KBS京都:毎週水曜25:05〜
テレビ愛知:毎週木曜26:35〜
サガテレビ:7毎週日曜25:25〜
Amazon Prime Video:毎週水曜25:00〜
監督:小島正幸
副監督:垪和等
出演:富田美憂、伊瀬茉莉也、井澤詩織、原奈津子、久野美咲、寺崎裕香、平田広明、斎賀みつき、後藤ヒロキ、市ノ瀬加那、斉藤貴美子、竹内良太、水瀬いのり、森川智之
シリーズ構成・脚本:倉田英之
キャラクターデザイン:黄瀬和哉(Production I.G)、黒田結花
デザインリーダー:高倉武史
プロップデザイン:沙倉拓実
美術監督:増山修、関口輝(インスパイアード)
色彩設計:山下宮緒
撮影監督:江間常高(T2 studio)
編集:黒澤雅之
音響監督:山田陽
音響効果:野口透
音楽:Kevin Penkin
音楽プロデューサー:飯島弘光
音楽制作:IRMA LA DOUCE
音楽制作協力:KADOKAWA
アニメーション制作:キネマシトラス
©︎つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会
公式サイト:http://miabyss.com/
公式Twitter:@miabyss_anime

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