波瑠×間宮祥太朗の“同志”という形の尊さ 『魔法のリノベ』が描き出す“幸福追求”の物語

「家のリノベーションは、人生のリノベーションでもある」

 毎回、依頼者のさまざまな「家の事情」や施工事例を通じて、そこに渦巻く悲喜交々を描き出す『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)。物語は折り返し地点をむかえ、敏腕バリキャリの真行寺小梅(波瑠)と、落ちこぼれ営業マン・福山玄之介(間宮祥太朗)による“凸凹バディ”の関係性にも、だんだんと変化が現れてきた。

 このドラマは毎回「リノベーション」というテーマを通じて「人生」を描いている。依頼者の人生、小梅と玄之介の人生。彼らを取り巻く「まるふく工務店」や、ライバル会社で小梅の前職である大企業「グローバルステラDホーム」の面々の人間模様が、テンポのよいコメディタッチで活き活きと映し出される。小梅と玄之介が顧客のために模索し提案するプランが、人間にとって普遍的な悩みの解決策を暗喩している。

 快適な新しさも欲しいけれど、思い出や「古き良きもの」も大切にしたい(第1話/古民家の「和モダン」リノベ)。相手を思いやりすぎるあまり、生まれるすれ違いもある(第2話/夫婦別寝室)。捉え方や視点を変えることで、道が開けることもある(第3話/“事故物件”のリノベ)。他者の意見ではなく、自分の人生は自分で決める(第4話/風水案件)。先が見えなくて困ったら、まずは5年後のライフ・プランを考えてみる(第5話/防犯リノベと父娘バトル)。こうした回ごとのテーマが、小梅と玄之介をはじめとする登場人物の成長や心情の変化と“シンクロ”する構成が見事だ。

 毎日を過ごす場所であるからこそ、「家」は人生と密接に関わってくる。「購入」でなく、「あるものを活かし、修繕・修正してより快適な環境を作る」という、リノベーションならではの特性も、人生と重なる。これまで歩んできた自分の人生の、リセットボタンを押すことはできない。だから、それを否定せず、「あるもの」の良い部分を活かし、直すところは直す。こじれてしまったときは、問題点を洗い出して最適な解決策を考える。頭を柔軟に、ときには発想の転換も必要。自分自身でよく考えて、人生をデザインしていくことが「幸福」への近道なのだと、このドラマは教えてくれる。

 前職で上司の有川(原田泰蔵)の陰謀に嵌められ、元カレ・久保寺(金子大地)に裏切られて居場所をなくし、退職を余儀なくされた小梅と、実弟の寅之介(落合モトキ)に妻を奪われ駆け落ちされて、バツ2のシングルファザーとなった玄之介。共に心に深い傷を負いながら、「人生、事故っちゃって(笑)」と自虐と作り笑いでやり過ごしてきた2人が、顧客にリノベーションの提案をしていきながら、そのつど「気づき」を得て、自分の人生をも再構築していく。

 人と社会、人と家、施主と施工主。世の中のあらゆる関係性が双方向であるように、小梅と玄之介の関係も、互いに影響しあって変化していく。「受注ゼロ」のダメ営業マンだった玄之介と、彼の“テコ入れ役”として「まるふく工務店」に中途採用された敏腕営業の小梅が、互いに“作用”しあうことで「人生のリノベーション」が始まる。共に闘う「同志」として、徐々に信頼を深めていく姿が尊い。

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