一生続く? 沢口靖子主演『科捜研の女』から読み解く、長寿シリーズのすごさ
また沢口のイメージといえば、“リッツパーティ”という人が多い。一時はネタとしていじる人も多かったが、長年CMを続けたことで若い世代からも沢口が愛されキャラとなり『科捜研の女』人気に繋がったのもあながち間違いではないだろう。このどこか浮世離れした存在が、マリコが仕事は完璧でも料理下手で芸術音痴といったキャラにハマるし、Season19 28話「筋肉は嘘をつかない」回で、なかやまきんに君と共演しても、真面目だからこそ若干ズレた面白さを醸しだす、演技力だけではカバーできない沢口にしかない魅力で、いつまでも観ていたいと思わせる一番の要因だ。
俳優ありきの長寿シリーズを代表する作品の魅力はそれぞれで、渥美清主演の映画『男はつらいよ』は良い意味でのマネリズムで、定型化したストーリーが、いつも変わらない安心感があること。田中邦衛主演の『北の国から』(フジテレビ系)などのホームドラマは、見続けていくことで主人公たちの成長を見届ける身内感覚になり、配役が変わったら当然興醒めする。米倉涼子主演の『ドクターX』(テレビ朝日系)や田村正和主演の『古畑任三郎』(フジテレビ系)は、1話完結で毎回違う事件が起きることで新鮮さが保たれること。武田鉄矢主演の『3年B組金八先生』(TBS系)などはそれらの条件がいくつも重なり、この俳優でなければ成立しないと思わせる。
当然ながら最初は作品の面白さで続編が作られることになるが、長寿になるには、物語の面白さ以上に主人公のブレない存在感が愛され、途中からは主人公を見るためのドラマになっていく。変わっていく現実の中で、こうして変わらないものがテレビの中にある安心感。もはや故郷のような感情すら湧き上がり、慣れ親しんだものにまた会いたい、新作が観たいと思わせ続編が続いていく。逆にそれは、新シリーズでキャラクターに違和感があると視聴者が離れていく原因でもある。もはや演技を超えた、そのキャラとイコールになれなければいけない難しさ。俳優として変わらないことが必須だからこそ、ある程度キャリアや年齢を重ねた俳優が主人公となる作品が長寿になることが多い。
また、視聴率や年齢などの物理的な問題だけでなく、俳優は定着したイメージを嫌いシリーズを辞めることが大半。長寿となる作品の主演はそうしたものを超越した存在なのは間違いなく、『科捜研の女』の沢口はそれに匹敵する。
さて『科捜研の女 2022』で気になるのが、東映が枠を持っていた「木曜ミステリー」がなくなり、火曜21時の新枠になったこと。ポスタービジュアルも今までとは違いクールなものになっており、一説によると若者層を意識したドラマ枠という噂を聞く。そもそも前シリーズは『科捜研の女』のファイナルのような作りだっただけに、もしかしたら東映や京都色が希薄な全く新しい作品になる可能性もある。公式も“進化ではなく、革新という新境地”と謳っているだけに、その革新がどちらに転ぶのか。ただ、沢口がいる限り魅力は変わらず愛されるドラマにきっとなるはず。
参考
※ https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202012170000672.html
■放送情報
『科捜研の女』
テレビ朝日系にて、10月スタート 毎週火曜21:00~21:54
出演:沢口靖子ほか
(c)テレビ朝日