吉田羊主演『コールドケース』いぶし銀の魅力が滲み出る ドキュメンタリーのような緊張感

『コールドケース』いぶし銀の魅力が滲み出る

 現在、シーズン3まで作られているWOWOW制作のドラマ『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』は、神奈川県警察捜査一課の警部・石川百合(吉田羊)を中心とした警察チームが“コールドケース”と呼ばれる未解決事件に立ち向かう、基本的に1話完結の刑事ドラマだ。

 本作は、アメリカで放送されたテレビドラマ『コールドケース 迷宮事件簿』シリーズの日本版で、主要登場人物や物語の構造は、かなり忠実に移植されている。各話の脚本は、オリジナル版を下敷きとするものがほとんどだが、過去に日本で起きた社会問題を背景としたエピソードにローカライズされている。その結果、とても日本的なドラマに仕上がっている。

『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』(c) WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

 まず本作では、物語冒頭に未解決事件が起きた時代について描かれる。たとえば、シーズン1の第1話の舞台は1996年なのだが、劇中では当時のヒット曲であるMr.Childrenの「名もなき詩」が流れる。そして音楽がフェードアウトして舞台が現在(放送当時の2016年)に変わり、未解決事件を捜査する石川たちが、当時の事件の関係者から証言を取っていくという流れになる。

 この流れはオリジナル版『コールドケース』の作劇構造を踏襲したもので、どのエピソードも同じ流れで進んでいくのだが、日本版が面白いのは、当時、日本でヒットした歌謡曲やJ-POPが流れること。同時代にヒットした洋楽も流れるのだが、やはり日本語のヒット曲が流れて、当時の時代背景が語られると、物語の生々しさが一気に倍増される。

 映像もその時代に合わせた色調となっており、1950年の事件を題材にしたシーズン1第6話「恋文」はモノクロ映像。1971年の事件を描いたシーズン2の第1話「学生運動」はざらついたフィルム映像風の映像で学生運動の様子が撮られている。時代ごとに映像の質感が変わっていき、現在に近づくほど、アナログからデジタルの手触りへと映像自体が変わっていくのだ。

 この過去パートの描き方は、バリエーション豊かで、冒頭の2分弱の映像だけを見ても、独立した短編映画のように楽しめる。これはシーズン1から監督を務めている波多野貴文を中心とする映像スタッフの熱量が高いからこそ可能だったと言えるだろう。ファッション等の時代考証も含めて、実に丁寧に作り込まれている。

『連続ドラマW コールドケース2 ~真実の扉~』(c) WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

 基本的に物語は1話完結なので、WOWOWオンデマンドの配信では、まずは全話の冒頭を観て、自分の気になる時代や好きな曲が流れているエピソードから観始めるのも、作品世界に入って行きやすい手段の一つかもしれない。例えば筆者の場合は、自分自身が10~20代だった1990年代が舞台となっているエピソードから、まずは楽しんだ。阪神淡路大震災やオウム真理教の地下鉄サリン事件といった、当時、実際にあった社会的事件の固有名詞がそのまま出てくることも物語の没入感を高めている。

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