『ちむどんどん』を観て思う『ハムレット』のセリフ “父不在”によって生まれた迷い

“父不在”の『ちむどんどん』

 その言葉について、NHK特集番組『仲間由紀恵・黒島結菜 沖縄戦、記憶の旅路』で黒島結菜は「命の大切さ、生きてることってすばらしいというメッセージ」を感じたと「自分のことを大切にまわりも大切にできたら、それが一番平和への近道なのかもしれないですね」とも語っていた。

 まわりを大切にする。演者・黒島が言ったことを暢子が気づくのはいつなのか。暢子はまわりを大切にしている、よかれと思ってやっているのだろうけれど……。

 和彦もまた、未熟で、母の気持ちや周囲の気持ちをなかなか慮れない。和彦の父・史彦(戸次重幸)も亡くなってすでにこの世にいない。智の家も父がいない。そろって、父が先立っていて、『ちむどんどん』の子供たちは生き方を教わる人がいないのである。ついでに言えば、博夫の父も、発言権がまったくなく、博夫の生きる規範にはならない。

 関節が外れた世界に生きるハムレットも、敵国の王子も、ハムレットの恋人オフィーリアも父を失って後ろ盾がない。みんな背中を見て学べるはずの父がいないのだ。それが関節が外れた最大の要因なのかもしれない。導いてくれる人がいず、秩序が乱れた世界で迷っているのだ。ハムレットたちと同じく足元が安定しない世界に暢子たちは、幸せを探してさまよっている。言われたことの本当の意味を自分たちで考えて発見することが幸せを見つける方法なのではないだろうか。残り2カ月、彼らが、自分のこともまわりのことも大切にできる、真の幸せを手に入れることはできるのだろうか。

 思いがけない他者の気持ちを知るにはーー。第84話では、引き裂かれた房子(原田美枝子)と三郎(片岡鶴太郎)の気持ちをそれぞれ、暢子と和彦が聞いた。房子と三郎はそれぞれ、自分が相手を捨てたと思っていた。こんなふうにそれぞれの気持ちを第三者が引いた視点で聞くことも大切なことである。

参考

※1 https://realsound.jp/movie/2022/07/post-1078828.html

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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