『競争の番人』坂口健太郎が覚えた違和感 “公取”に立ちはだかる高い壁
前回まで3話にわたって描かれてきた“ウエディングカルテル編”は、新川帆立の原作小説で描かれていたエピソードだったが、今回から始まる“アレス電機編”はドラマオリジナルの展開だ。原作エピソードを序盤に展開させ、その後は人物設定を活かしたオリジナルを織り交ぜてドラマとしてのクライマックスへ導く。この構成の手法は前クールの『元彼の遺言状』(フジテレビ系)でも取られたものであり、『競争の番人』(フジテレビ系)もまた、ここから先の見せ方が作品の成否を大きく占うことになりそうだ。
8月1日に放送された第4話は、世界的電機メーカーによる下請け会社30社に対しての“下請けいじめ”が描かれる。つまり、すでにこのドラマで学んだ用語を使わせてもらえば「優越的地位の濫用」にあたる案件だ。いわゆる“職業モノ”とはいえど、ドラマ的にも日常的にもかなりなじみの薄い公正取引委員会という題材。やはりその業務の内側に深く突っ込んでいくよりは、描きやすい案件を扱うことでこの職業への興味を持ってもらおうというねらいがあるのだろう。端的に言えば、“ウエディングカルテル編”でも触れられた「優越的地位の濫用」の応用編といったところだ。
“ダイロク”が、新たに扱うことになったのは「アレス電機」による優越的地位の濫用。楓(杏)は同社の役員である柴野(岡田義徳)が、かつて捜査一課時代に取り逃した強盗殺人事件の容疑者であることに気が付く。とはいえ重大事件に関与している可能性があると“公取”では調査ができないため一度手を離れるのだが、警察は捜査に動かず、検察にも上層部からストップがかかったために“公取”は調査を開始することに。因縁の相手を前に躍起になる楓たちは、下請け会社を回って証言を集めようとするのだが、どこも一様に口をつぐんだまま。しかし「丸川金属」の社長・丸川(吉沢悠)の様子から、小勝負(坂口健太郎)はある違和感を覚えるのである。
“ウエディングカルテル編”においては、カルテルを暴くための外堀としての役割(とはいえ1エピソードは割かれていたが)であった“下請けいじめ”に大きくフォーカスが当てられた今回。トップにかなり手強い人物が立ち、その人物への忖度があり、その牙城を崩すために“公取”は外堀から埋めていく。このスタイルは基本的に変わっておらず、まさに先に述べたような応用編としてのニュアンスが強い。とはいえ楓や小勝負をはじめとした“ダイロク”メンバーのキャラクター性、ひいては“公取”の役割/ポジションの前提がすでに描かれてきたからこそ、そこから新たなドラマ性が引き出されているとみえる。
“ずるをして勝つ”というアレス電機のやり口を、少年野球に重ね合わせて調査対象者の心を動かしたり、下請け企業の人々が結束して立ち向かおうとするさま。そして柴野よりも手前で“公取”に立ちはだかる検察上層部という高い壁。こうしたドラマ的にわかりやすい描写が、相変わらず予想だにしない奇策を繰り出す小勝負の掴みどころのなさといい塩梅で混ざり合うことで、ドラマとしてだけでなく公取という存在にも面白味を与えるのだろう。
■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、岡田義徳ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
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