グルメドラマとグルメバラエティの接近 グルメ紹介はストーリー性に重きを置く傾向に?

“グルメドラマ”と“グルメバラエティ”の接近

 グルメドラマが花盛りだ。すでに毎クール恒例になっていて、グルメドラマがないクールはないと言っていいぐらいである。

 特に今年の春ドラマにおけるグルメドラマの隆盛ぶりはすさまじく、テレビ東京の『ザ・タクシー飯店』、『しろめし修行僧』、『先生のおとりよせ』、『よだれもん家族』、また『異世界居酒屋「のぶ」Season2~魔女と大司教編~』(WOWOWプライム)、『シェアするラ! インスタントラーメンアレンジ部はじめました。』(BS-TBS)、『宅飲みシェアハウス』(tvkほか)、『今夜はコの字で Season2』(BSテレ東)、『片恋グルメ日記2』(TOKYO MX)と、地上波とBS、CSを含めて実に9本ものグルメドラマが放送されていた。配信オリジナルの『孤独のグルメ~美味しいけどホロ苦い…井之頭五郎の災難』(Paraviほか)があったのも見逃せない。

 これらのタイトルを見てもわかるように、グルメドラマと一言でいっても、シンプルにおいしい食べものやお酒を追求するもの、レシピを紹介するもの、人間模様を描くもの、新しいライフスタイルを提案するもの、恋愛や友情を絡めたものなど、実に多種多様だ。

 多種多様なグルメドラマだが、大きく2つに分けることができる。実在の店が登場するものと、そうでないものだ。これはグルメドラマ隆盛の嚆矢となった二つの作品、『深夜食堂』(TBS系)と『孤独のグルメ』(テレビ東京系)を比べてみるとよくわかる。

 『深夜食堂』は、マスター(小林薫)が経営する食堂「めしや」を舞台に、そこで提供される料理を通して人間ドラマが繰り広げられる。一方、『孤独のグルメ』は、腹を減らした井之頭五郎(松重豊)が実在の店を訪ね、提供される料理に舌鼓を打つ様子が描かれる。『深夜食堂』の「めしや」は訪れようと思っても実在しないが、『孤独のグルメ』に登場する数々の店にはファンが「聖地巡礼」するようになり、店の情報を集めたガイドブックも刊行された。

 『孤独のグルメ』のヒットの影響か、実在の店が登場するグルメドラマが増えている。春ドラマの中でも『ザ・タクシー飯店』、『今夜はコの字で Season2』、『先生のおとりよせ』、『よだれもん家族』などに実在の店が登場しており、『孤独のグルメ』と同じく、その店に行ってみたい、あるいはその店の料理を取り寄せて食べてみたいと思うようなドラマのつくりになっている。

 と同時に感じるのが、グルメドラマとグルメ情報バラエティの接近だ。料理単体をじっくり撮影したり、調理の様子を丁寧に映したり、店の情報やレシピを細かく紹介したりするなど、ドラマがバラエティの方法論を取り込む一方で、バラエティがドラマのようにストーリー性に重きを置くことが増えている。

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