『鎌倉殿の13人』金子大地VS小栗旬の緊張感 さまざまな対立構造が見えた後半戦の幕開け

『鎌倉殿の13人』頼家VS義時の緊張感

 結局、北条と比企の力比べが勃発してしまい、「五人衆」が十三人になってしまった。「わしはそんなに頼りないか」と聞く頼家の目は、まだ義時のことを信じていた。しかし「お前は入っておらんのだな。この先、何かあってもお前だけは私の側に……」と頼家が口にしたとき、義時の顔が陰るのを見た頼家は、裏切られたように悲しい目つきになった。そして次に怒りが募り、おさまらない気持ちをぶつける。この表情変化もまた切ない。

 義時が立ち去った後、しばらくの間映し出された頼家の横顔が心に残る。目を伏せ、黙りこくっていた頼家は、義時に裏切られた気持ちで落胆したようにも、御家人たちから軽視されている自身のふがいなさに気落ちしたようにも見えるが、父・頼朝のことを考えていたようにも見えた。幼い頃から頼家を見て育った比奈(堀田真由)が、頼家の気性について「困ったときほど、助けてくれ、と言えない性分なんですよ」と語っていたことから、ひょっとすると、亡き父に助けを求めていたのかもしれない。

 思えば頼家は、物語冒頭で自身の方針を表明したとき、「父を超える」の台詞のときだけ視線を落としていた。人を惹きつけてきた父のようにやりたいという思いはあれど、確固たる自信はないのだろう。あのとき、父ならどうするのか、必死になって考えていたのではないだろうか。

 そんな頼家が導き出した答えは、訴訟取り次ぎを行う十三人の御家人以外に、頼時を含む六人の若い御家人たちと政を行うことだった。頼家は「新しい鎌倉を皆で築いてまいろうではないか」と義時に皮肉めいた目を向けながら言い放つ。「鎌倉殿」と義時、そして御家人たちとの信頼関係に明らかな亀裂が入った。

 公式ガイドブックで金子は「何も経験がないのにいきなり将軍を任されたら誰だってうまくできないですよね」と話している(※)。経験の少なさから困惑し、御家人同士の争いにはうんざりさせられ、軽視されたと感じて怒りを露わにする。そんな頼家の若く繊細な感情を、金子は初登場時から立ち居振る舞いや声色で表現してきた。若き「鎌倉殿」が今後さまざまな課題に直面したとき、どのような振る舞いを見せるのか。

参照

※『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』(NHK出版、2022年)

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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