『Dr.STONE 龍水』見どころは千空と龍水が何をしでかすか? 物語から声優まで徹底解説

 『Dr.STONE』のアニメが帰ってくる。原作は石器時代に戻ってしまった人類が、科学の知識と団結力で文明を再建していくストーリーの少年漫画。第2期まで作られたアニメの終わりで、主人公の石神千空とライバルの獅子王司が繰り広げた覇権争いに決着がつき、2023年放送の第3期では、千空たちがいよいよ世界へと飛び出していく。そこで重要な役割を担うのが七海龍水という男。7月10日に放送のTVスペシャル『Dr.STONE 龍水』で全貌が明かされる。

『Dr.STONE』第26巻

 『アイシールド21』(集英社)の稲垣理一郎が原作を書き、『ORIGIN』(講談社)のBoichiが作画を担当、『週刊少年ジャンプ』(集英社)に2022年春まで連載された漫画『Dr.STONE』。7月4日に単行本の最終第26巻が刊行され、完結した。アニメ化もされ、2019年に第1期が全24話、2021年に第2期が全11話で放送されたが、完結までにはまだ先が残っていた。

 科学が大好きで知識も豊富な高校生の石神千空をはじめ、世界中の人間が謎の光を浴びて石化してしまう現象が発生。そのまま文明は崩壊していったが、千空は石になっても長い時間を数え続けて意識を保ち、約3700年後に自力で石化から脱する。人間に戻った千空は、半年後にやはり自力で石化を解いた親友の大木大樹とともに、石器時代に戻ってしまったような世界で暮らし始める。

 ここで威力を発揮したのが、千空の科学に関する知識。火をおこし料理をして住居を作っただけでなく、石化した人間を戻す溶液すら開発してしまう。そして、野生化したライオンから身を守るため、霊長類最強の高校生と呼ばれた獅子王司を目覚めさせるが、なぜか司は大人たちを毛嫌いして破壊すると言いだし、人間を全員蘇らせて文明を取り戻したいと願う千空と対立する。

 圧倒的な身体能力を誇りながら、決して粗暴ではなく自分なりの考えを口にして千空と対決する司は、アニメ版声優の中村悠一による落ち着いた演技もあって、まさにカリスマといった佇まいを見せていた。対して千空も、司から逃げた先で出会った、石化を逃れた人間の子孫が暮らす村の人たちを科学の力で振り向かせ、味方にしていくしたたかな姿を、小林裕介が『Re:ゼロから始める異世界生活』のナツキ・スバルとは違ったふてぶてしさを感じさせる声で見せてくれた。

 ここで繰り出される千空の科学の知識がすさまじい。石器時代に等しい状態から鉄を作り、ガラスも作り、ラーメンやコーラを作り、抗生物質を作り発電機を作り、通信機まで作ってしまう。どれも現代に生きている人にとっては、簡単に作ったり買えたりするものばかりで、「どこでもドア」や「タケコプター」といったドラえもんのひみつ道具のような驚きは少ない。けれども、部品すら手に入らない状況では、普通は作れないものばかり。それを千空は、材料を探し加工のための道具も作って完成へと持っていく。

 アニメの中で千空が何かを作り上げてしまうたびに、科学の知識を持つことの素晴らしさ、そして諦めないでチャレンジし続ける大切さを強く感じさせられる。蘇らせた科学の成果を、生活の向上だけでなく司が君臨する帝国との戦いに振り向けざるを得ないところがあるのは寂しいが、そうした武器で誰も傷つけないことを自分たちに課すところに、配慮を感じる。

 司が大人を嫌う気持ちにも理由があって、科学によって発展した人類に貧富の差が生まれ、差別が行われるようになった歴史を繰り返させない、という意思の現れだと理解はできる。だからといって、力こそが正義、といった態度には問題があることも示唆される。科学の知識だけでなく、正義と悪、戦争と平和といった問題についても考えさせてくれるところが、この作品の深いところだ。

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