『ハリー・ポッター』『ストレンジャー・シングス』から考える、子役作品シリーズ化の課題
あくまでも子どもを主人公に据えて続編を製作
一方で、あくまでも子どもを主人公として人気シリーズをつづけた例もある。その代表例の1つは、1990年に第1作目が公開された『ホーム・アローン』シリーズだ。マコーレー・カルキン演じる8歳の少年ケビン・マカリスターは、アクシデントで家族のクリスマス旅行に置いていかれてしまう。最初は誰にも干渉されない時間を楽しむ彼だが、次第に寂しさを感じはじめる。そんななか、彼は我が家を泥棒が狙っていることを知り、徹底抗戦を決意するというものだ。ケビンのかわいらしさとイタズラの才能を発揮した泥棒との容赦ない頭脳戦、そして最終的には家族愛を感じさせる笑いあり涙ありの同作は、いまやクリスマス映画の定番となった。この人気を受けて、1992年にはやはりカルキン主演で続編『ホーム・アローン2』が製作される。こちらはニューヨークを舞台とし、ケビンの宿敵である泥棒たちもジョー・ペシとダニエル・スターンが続投した。しかし1998年にシリーズの3作目として製作された『ホーム・アローン3』では、カルキンが15歳と子役としての寿命を迎え、俳優休業中だったこともあり、主演はアレックス・D・リンツが務めた。前2作とのつながりはないが、8歳の少年と泥棒の攻防という構図は変わっていない。その後は2002年に『ホーム・アローン4』、2012年に『ホーム・アローン5』がテレビ映画として放送された。さらに2021年にはディズニープラスオリジナル作品として、シリーズ6作目にあたる『ホーム・スイート・ホーム・アローン』が配信されたが、どれも主演を務めた子役はバラバラだ。それぞれに魅力のある作品ではあるが、前述した『ハリー・ポッター』や『ストレンジャー・シングス』のようなストーリーの連続性はないため、楽しみ方は違ってくる。
父親役をアントニオ・バンデラスが務めるなど、子役以外のキャストでも話題になった『スパイキッズ』シリーズは、残念ながら主演の交代による人気の低下がシリーズ終了の決定打になってしまった例といっていいだろう。冴えない両親が実は凄腕のスパイだったことを知ったカルメン(アレクサ・ヴェガ)とジュニ(ダリル・サバラ)の姉弟は、両親の残した手がかりと最新のスパイガジェットを駆使して、任務でピンチに陥った彼らを救いに行く。姉弟らしいバカバカしいケンカや失敗が面白おかしく描かれるこのコメディシリーズは、2001年から2003年にかけて3作が製作された。つづく4作目『スパイキッズ4D:ワールドタイム・ミッション』(2011年)では、カルメンたちのいとこであるレベッカ(ローワン・ブランチャード)とセシル(メイソン・クック)に主人公を交代。3D映画で入場の際、観客に匂いの出るカードを配るという遊び心のある“4D映画”として公開されたが、控えめに言って評判は散々だった。
続編で世代交代も
人気シリーズの続編として、再び子どもを中心に据えた作品もある。前述した『フルハウス』の続編『フラーハウス』(2016年~2020年)は、大人になったD.J.が夫を亡くし、3人の息子を妹のステフと親友のキミー(アンドリア・バーバー)とともに育てるという、『フルハウス』の男女逆転バージョンだ。この5人にキミーの娘であるラモーナ(ソニー・ニコル・ブリンガス)を加え、オリジナルの開始当初よりもさらに“フルハウス”な状態が描かれる。しかし本作の人気を支えたのは、成長し大人になった元子役たちのカムバックであり、“おじいちゃん”となった“3人の父親”の存在だった。オリジナルの『フルハウス』の人気を再認識させる一方で、続編自体は短命に終わってしまったのだ。同じキャストが同じキャラクターを演じるという意味では『ハリー・ポッター』や『ストレンジャー・シングス』と似ているように思えるかもしれないが、『フラーハウス』はそもそもストーリーに連続性のないシットコムであることや、続編までの時間が空き、D.J.たちが現在の状況になるまでが描かれていないという違いがある。
子役を中心に据えたシリーズを永遠につづけることは不可能だ。特に『ハリー・ポッター』や『ストレンジャー・シングス』のような人気シリーズは、子役のかわいらしさだけでなくストーリーの面白さが評価されている。彼らが成長するからこそ、物語は深みを増し、終わりに向かって進んでいく。私たちを夢中にさせたシリーズは、いったいどんな結末を迎えるのか。それを見届けることも長くつづいたシリーズの醍醐味といえる。始めたものはいつか終わらなければならない。それはいつか子供時代が終わるように、誰にも避けられないものなのだ。
■配信情報
Netflixシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界 4』
独占配信中
クリエイター:ザ・ダファー・ブラザーズ
製作総指揮:ロス・ダファー、マット・ダファー、ショーン・レヴィ
出演:ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー、フィン・ヴォルフハルト、ノア・シュナップ、ミリー・ボビー・ブラウン、ケイレブ・マクラフリン、ゲイテン・マタラッツォ、カーラ・ブオノ、ナタリア・ダイアー、チャーリー・ヒートン、ジョー・キーリー、セイディー・シンク、プリア・ファーガソン、マヤ・ホーク、ジェイミー・キャンベル・バウアー、エドゥアルド・フランコ、ジョセフ・クイン、ロバート・イングランド、 シャーマン・オーガスタス、メイソン・ダイ、ニコラ・ジュリコ、トム・ヴラシア