『スーパーヒーロー』は“ドラゴンボール映画”として満点 だからこそ期待したい次作の挑戦
どうしても悟空が主役として真ん中に存在することで、悟飯やピッコロといった重要キャラクターが、あまり活躍できなかったり、あるいは前座のような扱いになってしまっていた。敵キャラクターがインフレ化する中で、プロレスでいうところのジョバー(やられ役、相手の実力を観客に見せる役)のようなキャラクターは必要だが、かつての強敵や強キャラクターの姿に悲哀を覚えることもある。今作ではそういったキャラクターに焦点を当てて活躍させており、『ドラゴンボール』の映画化として、満点といえるだろう。また、ピッコロと悟飯の親子のような師匠と弟子の関係性、あるいはDr.ヘドの抱える悲哀やヒーローへの憧れを投影する様子、科学への警鐘などの要素もあった。
しかし、それらの要素を作品の核と呼べるほどの、大きなテーマ性へ昇華されることができなかった。
『ドラゴンボール』にそのような要素は不要、という声も聞こえてきそうだ。しかし、日本アニメの名作たちは、そういった様々な社会問題や家族の事情を核に据えることで、レベルの高い作品へと昇華してきた。クローン技術や行き過ぎた科学、そして倫理観を扱った『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』、あるいは“懐かしさ”と“昭和の哀愁”というある世代以上の大人が抱える思い出をテーマとした『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』は、アニメという枠を越えて映画史に残る傑作となっている。
「『ドラゴンボール』は熱いバトルと既存のキャラクターの活躍だけがあればいい」という声があるならば、間違いなく本作はそれに応えた。映像面に関してCG化という新しい挑戦を行い、見事に一定の戦果を収めたといっていい。
だからこそ、その次のステージとして物語に対する挑戦を期待したい。作品らしさとテーマ性の両立というのは、特に『ドラゴンボール』のような作品では難しいかもしれないが、だからこそ挑戦する価値があるのではないだろうか。その道の先に、新たな『ドラゴンボール』の姿があると信じている。
■公開情報
『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』
全国公開中
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:児玉徹郎
作画監督:久保田誓
音楽:佐藤直紀
美術監督:須江信人
色彩設計:永井留美子
CGディレクター:鄭載薫
出演:野沢雅子、古川登志夫、久川綾、堀川りょう、田中真弓、草尾毅、皆口裕子、入野自由、神谷浩史、宮野真守、ボルケーノ太田、竹内良太
配給:東映
(c)バード・スタジオ/集英社 (c)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会
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