『ちむどんどん』が教えてくれた自己批判の大事さ “全員”の物語を描く高度な挑戦

『ちむどんどん』“全員”の物語を描く挑戦

 まっすぐに熱く、社会問題に切り込んでいける記者は素敵だけれど、なんらかの事情で思い通りにやれない人もいるだろう。それでも完全に強権に屈するのではなく、隙間を縫って抵抗し続ける。そういう生き方もある。そういう人物に光を当てることこそドラマの意義である。

 ジェンダー、ジャーナリズムと小難しくなりそうな題材をさらりと描いた第11週を観て、なかなか高度なところに挑んでいることを感じた。もともと、主人公ひとりに絞らず、比嘉兄妹四人の四本軸で物語が進んでいるうえ、視聴者の年齢層も幅広く持たせているようだ。

『ちむどんどん』55話

 「ごめんなさい」と「ありがとう」なら子どもでも理解できる。「自己批判」なら大人が興味を持つ。優子(仲間由紀恵)の母の愛情、良子(川口春奈)の仕事も結婚も諦めない意欲や夫への不満は主婦層に、歌子(上白石萌歌)からは何かしたいけど一歩踏み出せなくて家にいる人たちの共感を得るだろう。こうして比嘉一家と和彦のそれぞれの生き方から、どの生き方も肯定し、それぞれがやりたいようにやれる世の中の希求を描く。男も女も大人も子どもも、地方(沖縄にいる人も)も首都圏も既婚者も未婚者も健康な人も健康に不安がある人も、お金持ちな人も(銀座の高級イタリア料理店)、お金のない人(鶴見、助け合いの場所あまゆ)も誰もに尊厳がある。まさに“ポークとたまごと男と女”。それを物語で描き出すことはさぞや骨が折れることだろう。来週は恋愛に興味のある層に向けたエピソードになるようだ。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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