『ちむどんどん』井之脇海は暢子の良き理解者に? 朝ドラの“ライバル”たちと比較
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第11週「ポークとたまごと男と女」では、「アッラ・フォンターナ」のシェフ・二ツ橋(高嶋政伸)が大けがをして入院。シェフ代行の座を巡り、ヒロイン・暢子(黒島結菜)と対立するのが、井之脇海演じる矢作知洋だ。
井之脇は子役としてキャリアをスタートさせ、今年で16年になる。数々の映画やドラマで存在感を放ち、朝ドラ出演も2013年放送の『ごちそうさん』(NHK総合)、2017年放送の『ひよっこ』(NHK総合)に続いて本作が3作目。彼の出演作の中でも、特に印象深いのが、本作で暢子の妹・歌子を演じている上白石萌歌と共演したドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)だ。
血の繋がらない親子の絆を描いた同作で、井之脇は上白石演じる“娘”みゆきの幼なじみ・大樹を好演。幼い頃から一途に思い続けてきたみゆきをそばで支える役どころで、その誠実で真っ直ぐな優しさが度々話題となり、「こんな彼氏がほしい!」「こんな息子がほしい!」と全方向からの支持を集めた。彼自身の清潔感あふれる雰囲気や物腰の柔らかさも相まって、「THE・好青年」のイメージを持っている人は多いのではないだろうか。
しかし、『ちむどんどん』で演じる矢作は、大樹と正反対ともいえる捻くれたキャラクターだ。自分は一流のレストランで働いているという自負があり、“ズブの素人”、しかも女性である暢子につらく当たる。だがプライドの高さ故に完璧を求めすぎてしまうのか、第46話では厨房の花形「ストーブ前」を任されるも、焦りからうまく立ち回れず、ホール担当に戻されてしまった。代わりにイカ墨パスタを考案した暢子が「ストーブ前」を任されることになり、彼の内心は穏やかじゃないはず。それでもなお、パスタを一口食べて「うんめぇ」と料理の味については一旦素直に認めるところに好感が持てる。
振り返ってみれば、矢作は暢子がつくった料理をいつも美味しそうに食べていたし、彼女が前菜のオリジナルレシピにアレンジを加えた時も「さすが、勉強熱心だな」と(嫌味かもしれないが)褒めていた。そんな言動を見ていても、矢作は対立を経て暢子の味方になってくれるのではないかという予感がする。
近年の朝ドラでも、いわゆる“ライバルキャラ”は最終的にヒロインの良き理解者に落ち着くことが多い。2020年放送の『エール』(NHK総合)では、小南満佑子演じる夏目千鶴子がオペラ歌手を目指す音(二階堂ふみ)のライバルとしてその役を担った。人生をすべて音楽に捧げてきた千鶴子は、家庭もキャリアも両方手に入れようとする音を「強欲」と非難。だが、音が出産と育児を経て音楽の世界に復帰した際には、厳しい現実を突きつけながらも悩める彼女を支えた。特に慈善音楽会で音が披露した伸びやかな歌声に、千鶴子が目を潤ませるシーンはふたりの熱い友情が感じられ、大きな感動を巻き起こした。