『ちむどんどん』二ツ橋の微笑みは父性か、それとも仮面か 高嶋政伸の“穏やかな料理長”像

『ちむどんどん』高嶋政伸の“爆発”起こる?

 『ちむどんどん』(NHK総合)第8週では、暢子(黒島結菜)が「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子(原田美枝子)に「知人の店を立て直すように」と言われ、屋台のおでん屋の立て直しに挑戦した。

 これまで何か言いたげな表情を見せながらも、穏やかに暢子へ接していたフォンターナ料理長の二ツ橋(高嶋政伸)。すぐにオリジナリティを出そうとする暢子へ、基本の大切さを諭す場面が印象的だった。二ツ橋は何を思い、素人同然で銀座の高級店で働き始めた暢子に接しているのだろうか。

 二ツ橋は、初登場時から物腰が柔らかく穏やかだった。フォンターナは料理人がホールで接客もする。暢子が上京し、友人の早苗(高田夏帆)と初めて訪れたときに案内をしたのも二ツ橋だった。「まさかやー!」と何度も大きな声を出し、銀座の高級レストランに似つかわしくない雰囲気の暢子。それでも嫌な表情一つ見せずに他の客と同じように接していた。

 翌日、暢子が三郎(片岡鶴太郎)からの紹介状を持ち「ここで働かせてください!」とフォンターナを訪ねてくる。全くの未経験だと暢子が話すと「ズブの素人かよ」「それでこの店に?」と従業員たちが驚く。二ツ橋もさすがにたまらない様子で「ご両親がレストランを経営してらしたとか?」と尋ねるも、家で料理を作っていましたと答える愚直な暢子。

 オーナーの房子からテストのチャンスをもらうも、暢子は“不合格”に。「当然だろう」とでも言いたげな表情を浮かべる従業員たちのなか、「もう一度 チャンスを与えるべきでは……?」と二ツ橋は声をあげたのだ。

 房子が無言で詰め寄ると「すみません! 全てオーナーが決めること。差し出がましく、申し訳ありません!」と慌てふためいたが、もう一度チャンスを与えると聞くと安堵の表情を見せた。このチャンスをつかみ、暢子は晴れてフォンターナで働けることになったのだ。

 二ツ橋が素人同然の暢子に手を差し伸べたのはなぜだろうか。二ツ橋は、房子のレストラン経営の手腕や、今なお学び続け教養にあふれる姿を尊敬している。房子の言うことは二ツ橋にとって絶対なのに、だ。

 暢子が働くようになってからも、他のスタッフは暢子の方言を小馬鹿にしたり、「比嘉、さっさとしろよ!」「こんなことも知らないのか!」と怒鳴ったりと、あたりがきつい。二ツ橋も本当は暢子のことを疎ましく思っているのでは……? そんな邪推をしてしまいそうになるが、その後も二ツ橋は暢子をフォローしている。暢子へだけではなく、二ツ橋は料理長の立場ながら常に従業員に丁寧語で接し、決して怒鳴らない。

 二ツ橋は、一生懸命な人を応援したい、穏やかで優しい人柄なのだろう。スローペースながらも成長を見せる暢子を見守っているように思う。それは、演じる高嶋自身の経験が、演技につながっていると本人が語っている。

 『NHKドラマ・ガイド連続テレビ小説ちむどんどん Part1』内で、高嶋は「シェフの役は何度か経験し、実際のレストランで料理修行をしたこともあります。そこで感じたのは、叱責されると焦りが生じ、必ずといっていいほど、ミスが起きます。もちろん、厳しくすることによって、より力が出る方もいらっしゃると思いますが、『アッラ・フォンターナ』のスタッフは穏やかに指示を出したほうがいいと二ツ橋は考えたと思います」と話していた。こうした実体験が、二ツ橋の“穏やかな料理長”像につながっている。

 暢子がお皿を割れば不安そうな表情で見つめ、まかないで夜営業で使う予定の牛肉を使ってしまったときは、瞬時に房子の表情に目を配りおとがめなさそうだと判断。「暢子さん、以後気をつけてくださいね」と一言伝える。もう少し厳しく接した方が……と感じる場面もあるものの、オーナーが暢子に厳しい分バランスを取っているのかもしれない。

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