『トップガン マーヴェリック』は完璧な続編 トム・クルーズが「カッコいい」を全力で体現

 ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル(トム・クルーズ)と仲間たちが戦闘機をブッ飛ばす。お話はシンプル極まりない。しかし『トップガン マーヴェリック』(2022年)はアクション映画の新たな金字塔であり、『トップガン』(1986年)の完璧な続編であり、映画人トム・クルーズの圧倒的な凄みを体感できる1本だ。

 本作は元々2019年に公開予定だったが、コロナ禍を受けて公開が延期された。本作と同時期に作られた多くの映画が劇場をスキップして配信に移ったが、トムクルさんらは劇場公開にこだわり、ざっくり3年ほど寝かされたわけだが……それも納得である。これは劇場の巨大スクリーンで観るべきだ。スクリーンいっぱいに広がる空、コクピットの中から見る超高速の景色、エンジンやミサイルの爆音、どれも劇場で体感すると鳥肌モノ。「巨大な画面でド迫力の映像を見る」、そんな初歩的かつ重要な映画の魅力が詰まっている。というか戦闘機の映像が凄すぎて、私はずっと踏ん張りっぱなしだった。手に汗を握るどころではなく、全身でアクションシーンの凄まじさに緊張していたのである。それこそ劇中で加速のGに耐えるパイロットたちのように。エンドロールに入る頃には心地よい疲労感に包まれ……体感では1~2キロは痩せたような気もする(個人の感想です)。

 そんな圧倒的な映像の迫力で魅せてくれるわけだが、同時に本作は『トップガン』の完璧な続編でもある。前作を観ていなくても何となく伝わるようにはなっているが、とはいえ本作を120%楽しみたいなら、是非とも前作を観てから劇場に向かってほしい。きっと作っている人間の情熱と誠意を感じることができるだろう。本作は開始1秒で「我々は全力で『トップガン』をやります! セルフパロディでも懐古趣味でもなく、今の時代の『トップガン』をやるんです!」と宣言するような、素晴らしく潔いシーンから始まるのだが……前作の熱心なファンなら冒頭5分で泣いてしまうかもしれない。私も「うぉー! 『トップガン』だー!」と鳥肌が立った。他にも、誰が見てもグースの息子にしか見えない姿になっているマイルズ・テラーや、みんな大好きアイスマン(ヴァル・キルマー)の最高に美味しい再登場など、前作をものすごく尊重しているのが分かる。続編のお手本のような作品だと言っていいだろう。

 そして、何はなくともトム・クルーズである。還暦間近にして戦闘機に乗り込む体の張り方も凄いが、それ以上に私がビックリしたのは、ちゃんとトムが演じるマーヴェリックがマーヴェリックだったことだ。

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