『ベター・コール・ソウル』の“後の展開”を知る者はいない ラロのキャラを変える演出も

 その頃、ジミー(ボブ・オデンカーク)はハワード破滅計画の決行日=D dayを目前にしていた。こうまでしてハワード(パトリック・ファビアン)は断罪されるべき人物なのだろうか? シーズン4を思い出してほしい。ビジネスパートナーであるチャックの死後、HMMの経営は傾き、憔悴するハワードにジミーは気遣いの言葉をかけ、時に発破をかけていた。これまで幾度となく見下された鼻持ちならないヤツだが、生前の兄チャック(マイケル・マッキーン)が最も懇意にしていた人物であり、大切な人を失くした者同士として一目置いているようにも見えたのだ。

 シーズン6ではそんなハワードのキャラクターが掘り下げられている。家庭ではせっかく作ったカフェオレを妻に無下にされる哀れな夫であり、あの手この手で嫌がらせをしてくる“ジミー問題”に直面するや、殴り合えば憂さも晴れるだろうとボクシングでの決着を提案するフェアな一面の持ち主でもある。そんなハワードを破滅させようとするジミーの表情は悪事のスリルに身を任せている瞬間はあるものの、一貫してどうにも冴えない。ボクシングに挑み、返り討ちにあったジミーは言う。「ハワードを無視して立ち去るべきだったのに、なぜ誘いに乗ったのだろう」。そんな彼にキムは返すのだ「あなたは知ってるからよ。後の展開を」。

 いや、『ベター・コール・ソウル』において“後の展開”を知る者は誰もいない。計画の破綻から中止を訴えるジミーを尻目に、キムは転落の道へとハンドルを切る。少女時代に見た母親の万引きが、ジミーによって知った悪事の快感が、彼女に事は成ると思わせたのか。次回、シーズン6は前半部の最終回を迎える。

■配信情報
『ベター・コール・ソウル』シーズン6
Netflixにて配信中

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