高橋文哉、研ぎ澄まされていく魅せる能力 “二つの登竜門”をくぐり抜けた筆頭俳優に

 90年代前半にもドラマ化された深見じゅんのコミックを再びドラマ化した『悪女(わる)〜働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?〜』(日本テレビ系)。今田美桜演じる新入社員の田中麻理鈴が、旧態依然とした商社に入社し、先輩社員から授かった“出世100カ条”を武器にさまざまな部署を転々としながら会社という小さな社会を変えていく。日テレ水曜22時ドラマらしく毒素の少ないお仕事ドラマでありつつ、古典的な空気感と現代的なテーマ性とのバランスが絶妙で、実に小気味良い一本だ。

 5月11日に放送された第5話では、営業四課に移動となった麻理鈴がバレンタインフェアを成功させるために奔走した。それを通してフォーカスが当てられていくのは、日本ならではのものである社内恋愛という文化。麻理鈴自身も“T・Oさん”こと田村収(向井理)に憧れを抱き、峰岸(江口のりこ)とT・Oさんの関係を疑い、そしてアクシデントで抱きついてしまった小野(鈴木伸之)がいつの間にか麻理鈴を意識するようになるなど、ドラマ前半では具体性のなかった恋愛要素が、このドラマを盛り上げる一要素になりつつある。

 そして5月18日の第6話から物語は第2章に突入する。入社2年目を迎えた麻理鈴の前に、初めての“後輩社員”が現れる。その1人を演じるのは、第1話からビル清掃のアルバイトとして麻理鈴をサポートし続けてきた山瀬(高橋文哉)だ。第5話の中盤、麻理鈴と小野が仲睦まじげに話しているところを遠目で見ていた山瀬。それに気が付き、睨まれていると感じる小野。麻理鈴の恋のベクトルがT・Oさんに一方的に向くなか、小野と山瀬が麻理鈴をめぐって争いを繰り広げるフラグが立てられたというわけだ。

 そんな山瀬役を演じている高橋。昨年秋クールに話題を集めたTBS系ドラマ『最愛』や、今年1月クールに放送されたカンテレ・フジテレビ系ドラマ『ドクターホワイト』と話題作への出演が相次ぐ高橋は、2020年秋クールに放送された『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)以降、今回の『悪女』に至るまで7クール連続で民放連ドラに出演するほど引っ張りだこ。10月からはTBS系ドラマ『君の花になる』への出演も決定している。今年2月には清水崇監督の「恐怖の村」シリーズである『牛首村』でも重要なポジションで登場し、同世代屈指の演技派である萩原利久と絶妙な空気を作り出すなど、出演作を重ねるたびに確かな成長ぶりを見せている印象だ。

 俳優デビューを飾ったのは2019年に放送された『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)。同シリーズがこれまで数多くの若手俳優たちを輩出してきたことについては改めて説明の必要もないだろう。平成の頃は菅田将暉を筆頭に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」出身者の率が高かったが、この『ゼロワン』から始まる令和シリーズでは(現在放送中の『仮面ライダーリバイス』の前田拳太郎はジュノンの候補者ではあるが)その傾向が変わりつつあるようで、高橋や続く『仮面ライダーセイバー』の主演2人と、いずれもABEMAの恋愛リアリティ番組『オオカミ』シリーズの出身者から起用されている。

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 高橋が出演していたのはシーズン4の『太陽とオオカミくんには騙されない』で、ちょうど『機械戦隊ゼンカイジャー』で主演を張った駒木根葵汰もいたシーズンだ。『オオカミ』シリーズの視聴層である若い世代には『ゼロワン』以前からすでに知れ渡っていた存在であったわけで、男女問わず現在の若手俳優・タレント・モデルなどの登竜門として機能している同シリーズから、あらゆる世代に知れ渡ることができる王道かつ定番の登竜門である“ライダー俳優”へと、二つの登竜門をくぐり抜けてステップアップしてきた逸材ということだろう。しかも前述の通り、高橋を皮切りにライダー/戦隊シリーズどちらも“オオカミ出身俳優”が続く令和の時代、その先陣を任されたことは非常に大きい。

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