愛されたければ、愛するということ 『私の解放日誌』を通して考える究極の愛

『私の解放日誌』を通して考える究極の愛

未だ明かされない、謎の隣人・クの過去

 一方で、未だ謎の存在であるクについても、少しずつベールが剥がされていく。彼は毎晩1人で焼酎を飲む。何もしたくない、誰とも関わりたくないと言うクに、チャンヒは素朴な疑問を投げかける。出ていく人ばかりのこの町にどうしてきたのか、と。クは「電車を乗り間違えた」と答えるだけだった。まだまだ多くを語ろうとしないク。これから彼の謎に迫っていくと考えられる。

 第4話の終わりにはクとミジョンの関係が大きく動き出した。天候が荒れていたある日の深夜、クはいつものように焼酎を飲んでいた。雷が近くの電柱に当たり、火花を出しているにも関わらず、彼は全く動じず、ぼーっと見つめている。その様子を見たミジョンは、危ないから家に入れと初めて感情を大きく表し、無理矢理クを家に押し込んだ。雷を見ても怖くないし、やっとこの世界が終わると思うと言っていたミジョン。しかしそれでもクが危ない時には、思わず体が動き、助けていた。

 そしてある晴れた日、畑仕事をしていたミジョンの帽子が川を越えて飛んでいってしまった。それを見たクもまた、帽子を取るために、思いっきり跳躍をして川を飛び越えたのだ。あまりに美しいフォームに、ミジョンの両親とチャンヒまで言葉を失っていた。おそらく彼は今まで自分の意志で誰かのために動いたことはなかったのだろう。世界を遠くから見ていた2人が、その世界に入り込んで、人のために何かをした瞬間だった。

 うんざりする毎日を過ごし、都会と田舎を往復する3兄妹だったが、少しずつ自分たちで今の状況を変えたいともがき始めている。計画通りの人生なんか存在しない。無計画の中でどう自分の力で方向を変えていくのかが人生の醍醐味と言えるのではないか。彼らと一緒に人生の在り方について考えることができる作品だと、改めて強く感じた。

■配信情報
『私の解放日誌』(全16話)
Netflixにて配信中(毎週日曜、月曜に最新話配信)
脚本:パク・ヘヨン
監督:キム・ソクユン
出演者:イ・ミンギ、キム・ジウォン、ソン・ソック、イ・エルほか
写真はJTBC公式サイトより

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