『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は最高にリッチで満足感のある傑作

『ファンタビ』最新作から味わえる満足感

 まず、これまでの『ファンタビ』シリーズはそれぞれの作品で少しだけ『ハリポタ』シリーズの要素(出身寮やニコラス・フラメルの登場など)がありましたが、それらはあくまでイースターエッグ程度に抑えられ、強い関連性がないように作られてきました。しかし、今作はあのホグワーツの校長・ダンブルドアの過去がテーマになっているため、『ハリポタ』シリーズに最も密接に関わっているのです。そのため前作でも登場しましたが、本作ではホグワーツ城がガッツリ登場するし、場内のあそこにまた戻れるし、『ハリポタ』シリーズでお馴染みのキャラがカメオ出演程度ではなく、これまたガッツリ話に関わってくる。逆に『ハリポタ』シリーズに馴染みのない方は、ぜひ全シリーズを、と言いたいところですが、特に『不死鳥の騎士団』以降の4作を復習していくと良いと感じました。

 そんなふうにファンが楽しめる要素がふんだんにあるだけでなく、作品単体として物語がかなりまとまっていて、“ちゃんと面白い”のが本作。ストーリーは前作のラストに繋がる形で始まり、ニュートたちは期限があるなか、あるミッションを遂行させなければいけない。そのため、前作よりも長尺なのにプロットがダラけずにスピーディーに展開されていくし、それが決して駆け足になっているわけでもない。それは、そのミッションの背景に関わっている人物、それぞれの人間ドラマがしっかり丁寧に描かれているからです。ダンブルドアとグリンデルバルド、クイニーとジェイコブ、クリーデンス/アウレリウス(エズラ・ミラー)が苛む孤独……。なにより、本作が優れている所以は、『ハリポタ』色がシリーズで最も濃いにもかかわらず、しっかり『ファンタビ』らしい作品としてまとめあげられているところです。物語のキーを握るのが魔法生物であることもそうですが、やはり大人向けなシリーズとして重厚感のある演出、そして政治的な要素もある。ただ、本作に最大の深みと旨みを持たせたのは、グリンデルバルドとダンブルドアの関係性です。

 制作期間中、ジョニー・デップの降板劇が話題になりましたが、本作でマッツ・ミケルセンが演じるグリンデルバルドの重厚感、カリスマ性、色気、哀愁、全てに脱帽です。彼とジュード・ロウ、この二人の名役者の繊細な表情の動かし方を含めた演技と説得力が物語に切なさと重厚感を与え、この映画をさらなる高みへ牽引したと言っても過言ではありません。

 テンポよく進むストーリーに、魔法生物とのコメディカルでハラハラするシーンや、視覚的にワクワクさせてくれる魔法のシーン、深くて悲しい人間関係、恋と愛……。まさに『ハリポタ』が全シリーズを以てして描いたような、楽しい(スウィートな)ことも、辛い(ビターな)ことも、それが塩梅よく一つの作品に凝縮されている本作。スピンオフシリーズ史上最高にリッチな味わいで、満足感が得られる傑作です。

■公開情報
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
全国公開中
監督:デヴィッド・イェーツ
脚本:J・K・ローリング
プロデューサー:デヴィッド・ヘイマン
出演:エディ・レッドメイン、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、カラム・ターナー、ジェシカ・ウィリアムズ、キャサリン・ウォーターストン、マッツ・ミケルセンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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