白石聖、最後の(?)高校生役で示した実力 『しもべえ』を経て新たなステップへ

 白石がここまでコミカルな役柄に振り切ったのは、連続ドラマとしては初(作風は違うものの、単発として『世にも奇妙な物語 ‘19秋の特別編』(フジテレビ系)の「恵美論」は『しもべえ』の設定にかなり近い)。序盤こそ、安田顕の演技で頭がいっぱいになってしまうものの、その受け手として徐々にエンジンがかかっていく白石に気づくはず。

 ほか作品との違いは、喜怒哀楽の感情をオーバーに表現していること。例えばこれをキラキラの恋愛青春映画でやってしまえば、一人浮いてしまうが、コメディの中では演出が大げさな演技にも付いてきてくれる。さらに、白石はユリナとしてたっちゃんこと辰馬(金子大地)との恋愛も、大粒の涙を流すハートウォーミングな最終章も演じている。例えるならば、ニューアルバム(コメディ)にベストアルバム(恋愛青春)が付いてきたような、そんな白石聖の演技の“全部盛り”が楽しめるのが『しもべえ』である。

 また白石は「いろんな種類の声を出してみようと意識しています」とも話していたが、そのことがよく伝わってくるのが彼女が今回のドラマを通して何度も叫び続けた「しもべえ!」というセリフである。ユリナのピンチにヒーローとなって現れるしもべえ。序盤は助けを求めるストレートな「しもべえ!」だったが、その叫びの目的は徐々に変容していくことになる。特に白石の感情がたっぷり乗った最終章の「しもべえ!」は感涙もの。2度目のリコメンドになるが『I”s』でイメージが止まっている人や『胸が鳴るのは君のせい』で気になった人にこそ、『しもべえ』の白石聖に出会ってほしい。

 『しもべえ』は終わったばかりだが、3月27日には白石が主演の『ファーストステップ ~世界をつなぐ愛のしるし~』(BSよしもと)がオンエア。5月には『カナカナ』(NHK総合)への出演も控えている。『ファーストステップ』では外務省国際協力局の職員、『カナカナ』では元ヤンのOLを演じることになる。まだまだ高校生役も観ていたいが、ユリナが春を迎えたように、白石も新たなステップを歩き始めようとしている。

■配信情報
ドラマ10『しもべえ』
NHK+にて配信中
出演:安田顕、白石聖、金子大地、矢作穂香、内藤秀一郎、矢田亜希子
原作:村田ひろゆき『しもべえ』
脚本:荒木哉仁、遠山絵梨香
音楽:大友良英
制作統括:谷口卓敬(NHK)、小林宙(共同テレビジョン)
演出:山内大典、紙谷楓
写真提供=NHK

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