平田オリザ、山下健二郎らが『yes,yes,yes』『pinto』を絶賛 矢野瑛彦監督のコメントも

矢野瑛彦監督作に著名人が絶賛コメント

 3月25日よりアップリンク吉祥寺にて公開される矢野瑛彦監督作『yes,yes,yes』と『pinto』に各界の著名人が寄せた絶賛コメントと矢野監督のコメントが公開された。

 これまでトルコのカアン・ミュジデジ、フランスのカテル・キレヴェレ、中国のビー・ガン、韓国のキム・チョヒなど、海外の新人監督の優れた作品の発掘に注力してきた配給会社リアリーライクフィルムズが、『オーファンズ・ブルース』『血筋』『WHOLE』など日本のインディーズに特化した映画の配給で先鋭的な活動を続けているアルミードとタッグを組み、まだ商業公開の目処が立っていない自主制作作品をピックアップ。「ReallyLikeFilms SHOWCASE」として、気鋭の新人監督を発掘、劇場公開する。今回はその第1弾として、宮崎出身の矢野監督の作品にフォーカスする。

 昨年、大阪アジアン映画祭で上映され、大きな反響を呼んだ『yes,yes,yes』は、余命宣告を受けた母親の喪失を怖れる主人公の青年の、人の “生” そのものへの疑問が、思春期特有の感情を通して荒々しく表現されていく。一方『pinto』は、「あなたの良いところはわがままを言わないところ」と母親から言われて成長してきた若い女性が、「わがまま言っていい?」と言って寄って来た男との関係をたち切れずにいる、その日常をリアルに活写する。

 『yes,yes,yes』には、劇作家の平田オリザ、三代目 J SOUL BROTHERSの山下健二郎、映画監督・俳優の二ノ宮隆太郎、DJ/ProducerのDJ SOULJAHがコメント。『pinto』には、ドラァククイーン、美術家のヴィヴィアン佐藤、日本映画監督新人協会会長の大高正大がコメントを寄せている。

 1985年生まれの矢野監督は大学卒業後、ENBUゼミナールで熊切和嘉監督に師事し、その後アルバイトをしながら自主映画を製作。『白色背景』で福岡インディペンデンス映画祭奨励賞を受賞した。

 今回は『yes,yes,yes』『pinto』に加え、短編『賑やか Neon City』も同時上映されるが、矢野監督は自身の脚本執筆について、「脚本は自分の経験をシーンに入れ込んでいます。脚本を書く時にたくさん取材をします。知り合いとか、知り合いの知人に話を聞きます」とその背景を明かす。

 『yes,yes,yes』にはもともと構想があったといい、「自分が高校生の頃に両親と大口論をして、僕が台所に行ったら、両親が抱きしめてくれました。死と向き合わなくてはならないということを、はめ込んで作りました」と作品のバックグラウンドを明かす。続けて、「映画のテーマである『何のために生きているんだろう?』という不安は2、3歳の時から考えていたことです。ラストシーンに、その答えがあります。1つの命が無くなる時に、新しい命が生まれるということは、私の考えです。最初はカラーで撮影していたのですが、実景が綺麗だと言われていましたが、それを見せたいわけではなかったのでモノクロにしました。最後の乱闘シーンを撮影するために、4時間かけて細かいところまで打ち合わせしました。一発撮りでした。夫婦愛がよくわかるのは、俳優さんたちの力だと思います」と映画に込めた想いを語った。

 また、『賑やか Neon City』については、「自分の経験で、都会の中で抱えている孤独感を表現したいと思いました。『pinto』が評価してもらえなかったので、映画を作る夢を諦めなくてはならないのかと思っていた時期でした。母親が『会いたい』と電話で話すシーンは、自分と母親の電話の会話を、そのまま使いました。俳優たちは、常に走っていました。演出の時に、自分も走っていました。原宿と豊洲で撮影しました。殴り書きに近い映画です」と撮影を振り返った。

『yes,yes,yes』に寄せられたコメント

平田オリザ(劇作家)

受け入れがたい別離を、どうにかして受け入れようとする家族の姿が直球勝負で描かれる。
その表現は、最初から最後までストレートで、その素直さにたじろぐ。

山下健二郎(三代目 J SOUL BROTHERS)

必ず訪れる避けては通れない生命の『死』について深く考えさせられた作品。残された家族が時間がかかりながらも受け入れていかなければならない姿に感動しました。

二ノ宮隆太郎(映画監督・俳優)

矢野瑛彦監督の独特な感性に何度も息を呑みました。
登場人物の眼差しが忘れられないです。

DJ SOULJAH(DJ/Producer)

コロナ渦でなかなか故郷に帰れない人達にも、この1時間弱だけは帰郷した気分に浸れる。人生行路とはよく言ったものだ。

『pinto』に寄せられたコメント

ヴィヴィアン佐藤(ドラァククイーン、美術家)

わたしたちは生まれてから何処へ向かおうとしていたのか、とうに忘れてしまった。路地から大通りに出てしまうと記憶は喧騒に呑み込まれ、ただただ忘却の海を泳ぐしかない。ゆっこは忘れないようにシャッターを切る。いつの間にかゆっこのモノローグは、遠い記憶の影帽子となってわたしたちの人生の一部に張り付いていた。

大高正大(日本映画監督新人協会会長)

矢野監督の映画『pinto』では、自己をみつめている深い意識の流れが描かれているように、私には見えます。恋愛のリアル、青春の惨めさ、辛さ、寂しさ、苛立たしさ……など、見ていて滑稽で、笑ってしまう。私は、この映画をコメディとして観てしまったのだが、矢野監督がどう考えているのかは分からない。まずい事を言ったのかもしれない……?!
この映画の中では、日常の日常らしさがリアルでドラマティックで……それに大胆だ。なんだか、矢野監督のリアルは、「汚くて奇麗」だ。今村昌平監督のリアリズムの世界が、思い浮かんだ。
また技術的な意見だがカメラワーク、カメラサイズやアングルも大胆だ。またユキコの心 の変化がモノクロームからカラーへと行ったり来たりするのも面白い。 最後に、私が思うこの映画のキーワード「オチツク」が、キャラクター達の心情が落ち着かない映画『pinto』の世 界をうまく描いていて、可笑しく思える。私は映画『pinto』が好きだ。

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■公開情報
『yes,yes,yes』『pinto』
アップリンク吉祥寺にて、3月25日 (金)公開

Aプログラム
『yes,yes,yes』
出演:上杉一馬、瓜生和成、井上みなみ、川隅奈保子
監督・脚本:矢野瑛彦

『賑やか』
出演:武谷公雄、奥津裕也、岩瀬亮、木村知貴、藤野晴彦
監督・脚本:矢野瑛彦

Bプログラム
『pinto』
出演:小野寺ずる、大橋一輝、永峰絵里加、木村知貴、坊薗初菜、岡野康弘、矢野瑛彦、富永敬太
監督・脚本:矢野瑛彦

配給 : リアリーライクフィルムズ、アルミード
(c)矢野瑛彦
公式サイト:www.reallylikefilms.com/yesyesyes

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