世界ランキングでも1位の『未成年裁判』 社会派リーガルドラマの3つのヒット要因

 Netflixオリジナルドラマシリーズ『未成年裁判』は、2月25日に配信開始になって以来、日本のTOP10リストの上位を記録し続けている。2月28日から3月6日までのNetflixのグローバル視聴時間ランキングでも、4,593万時間で非英語圏シリーズの1位を記録した。香港、日本、マレーシア、シンガポール、ベトナムなど8カ国で1位、バハマ、ボリビア、メキシコ、ペルーなどの南米、アフリカではモロッコなど合計25カ国でTOP10入りした。(*1) 日本のTOP10を韓国ドラマが占めることはすでに珍しいことではないが、今までは『愛の不時着』(2019年)、『わかっていても』(2021年)、『海街チャチャチャ』(2021年)といった恋愛を主なテーマに据えた作品の人気が高い印象だった。ジャンルで言うとスリラーに属する『イカゲーム』(2021年)、『地獄が呼んでいる』(2021年)、『今、私たちの学校は…』(2022年)などのNetflixオリジナルシリーズも高い人気を得ていたが、『未成年裁判』はそれらとも違う社会派リーガルドラマだ。このドラマの世界的人気の理由を考察してみたい。

格差と分断社会に次ぐ、世界共通の問題提起

 映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)や『イカゲーム』が世界中でヒットした理由の一つに、全世界的に問題となっている経済格差と分断をテーマに描いていることがある。どの国でも当てはまる問題を、巧みなストーリーテリングと優れた映像技術で作り上げ、映像業界に韓国ブームを引き起こした。そして、今作では少年犯罪と少年法を世界共通の問題として提起した。『未成年裁判』の主人公シム・ウンソク判事(キム・ヘス)は、未成年が引き起こす犯罪を憎んでいる。その理由は、エピソードを進めるごとに明らかになっていく。

 ドラマの中では少年法に関する様々な問題が提起されるが、そのどれもが少年法に限らず司法についてまわるものだ。例えば、第1話・第2話の中心となるのは、少年法下では刑事罰対象とならない14歳以下の触法少年の扱いについて。年齢に囚われずに罪の所在を明らかにする必然性を、被害者と家族、犯罪を起こした少年少女と家族、そして法曹の視点から問いかける。

 ドラマ内に登場する少年たちのように、韓国では10歳以上14歳未満を触法少年とし、日本でも14歳未満の触法少年は罰せられず、児童福祉法による処置が行われる。日本においては、今年4月より少年法の一部改正が施行される。これは民法改正で成人年齢が18歳に引き下げられたことによるもので、17歳以上20歳未満も引き続き「特定少年」として少年法が適用されるが、起訴案件における実名報道や原則逆送(検察官送致)対象事件の拡大が行われる。

 アメリカでは州によって法規が異なるが、7歳未満を罪に問わない刑事未成年とし、7歳以上17歳までを少年法制で裁く。17歳以下でも、凶悪犯罪を犯した犯罪者は成人と同様に仮釈放なしの終身刑が言い渡されていたが、2012年に米国最高裁が違憲と認めたことにより、未成年犯罪者の仮釈放や再審に至る道のりを追うドキュメンタリー『塀の中の少年たち -なぜ彼らは殺人を犯したのか』(2019年)が作られた。このドキュメンタリーは各ストリーミングサービスで観ることができる。少年法の扱いや処遇については、どこの国でも活発な議論が起きていて、誰もが興味を持ちやすい題材に焦点を当てた着眼点の勝利だ。

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