『進撃の巨人』マルコの最後の言葉 “理解”と“対話”の重要性を説いた一連の会話劇

 TVアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』第84話では、これまで争い、憎しみあってきた敵味方の「対話」に重点が置かれていたのが印象的だった。

進撃の巨人

 ミカサら一行は、ハンジ・ゾエからリヴァイ・アッカーマンの生存、マーレの残党と手を組んだことが明かされる。だが、現在の状況ではまだエレンを止めることは到底できないとあって、ミカサ・アッカーマンとジャン・キルシュタインを巻き込んで協力してほしいと申し出る。ハンジの思いに賛同するミカサに対し、ジャンは「エレンを殺すことはこの島を滅ぼすことになる」と冷静かつ現実的な意見で反論。冒頭のシーンで理想的な未来像を描いていた現実主義者のジャンらしい最もな意見だ。

 だが、ハンジは理想論と知った上で「虐殺はダメだ。これを肯定する理由があってたまるか!」とジャンの思いを跳ね除ける。ハンジの思いはたしかに理想論なのかもしれないが、たとえどんな状況にあったとしても人道を無下にした虐殺はあってはならない。そして、調査兵団の14代団長であるハンジは、人類の自由のために心臓を捧げてきたかつての仲間たちの思いも背負っているのだ。各々の正義が衝突し合うこの状況下であっても、自らの守るべき倫理を貫くハンジの姿勢は心に響くものがあった。

 第84話には戦闘シーンは一切なく、森のなかで敵味方が入り混じり会話が繰り広げられた。そこで象徴的だったのが、会話中に度々挿入された木々の風景描写である。キャラクターが話し始めると意味ありげに木々のカットが入ってくるので、きっと制作側の意図があるのだろうと思いながら観ていたが、おそらく彼らの心理的な迷いや戸惑いが枝分かれしていく木々や森とリンクしていたのではないだろうか。

 エレンを止めるという目的のために手を組んだかつての戦友。しかし、彼らはまだこれまでの行いを話し合う機会はなかった。だが、これまで憎しみ合ってきたもの同士、一悶着がないわけはない。

 ハンジらがエレンの行動を止めようとしていることに対して、「正義に目覚めた」という言葉を口にするテオ・マガト。それに反論したのはジャンだった。マガトにとってはエルディア人に蹂躙された歴史を持つマーレが正義であり、ジャンにとっては壁内に巨人を送り込んできたマーレが悪魔なのだ。これは正義が絶対的なものではないことを表しており、見方によって正義の捉え方が変わるということである。

 ハンジの仲介もあって、彼らの口論は収まったが今度はアニ・レオンハートとミカサが一触即発の事態になる。ミカサに「エレンを殺せるのか」と問うアニ。ミカサは「エレンを止める方法は殺すだけじゃない」とアニを説得するが、アニが言うように虐殺が止まらない場合の最終手段を考えなければならないのは確かだ。父親が生活しているマーレを守りたいと願うアニとエレンの命を守りたいと願うミカサの相反する思いがぶつかり、一時は戦闘態勢になった。

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