『アンチャーテッド』が変化を進める原動力に? ゲーム原作映画の展望を考える
ソニー・インタラクティブエンタテインメントが携わるTVゲーム作品を映像化する新事業「PlayStation Productions」。その第1作となる大作映画『アンチャーテッド』が公開され、興行的に好調なスタートを切った。
基になったのは、同名の人気TVゲーム『アンチャーテッド』シリーズ。『インディ・ジョーンズ』シリーズのような、秘境や遺跡を冒険するという世界観で、美麗なグラフィックや、ムービーとゲームプレイへのシームレスな移行によって、「映画をプレイする」ような感覚が味わえるゲーム作品だ。「オープンワールド」ジャンルのような、プレイヤーが好きな場所に行けるような自由度はなく、基本的には一本道のシナリオを進んでいくというシンプルなつくりではあるものの、だからこそゲーム初心者にもとっつきやすい手軽さと、開発者のパワーが集中された演出によって冒険を楽しむことができる。
しかし、そんな映画のようなゲームを、さらにまた映画にする意味はあったのだろうか。ここでは、その内容や出来が実際にはどうだったのかを振り返りながら、今後のゲーム原作映画の展望を考えていきたい。
500年前に消えたとされる幻の海賊船の財宝を探して世界をめぐる脚本は、今回の映画オリジナルのもの。やはり『インディ・ジョーンズ』シリーズを想起させる、娯楽性の高いものとなっている。とくに、バルセロナの教会から市街地の地下を探索していく流れは、ほとんど『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989年)のヴェネチアでのエピソードそのものといえる。
フィリピン沖で展開される宝の争奪戦では『グーニーズ』(1985年)で見られるような、冒険心がくすぐられる海賊船も登場する。この海賊船の隠し場所については、いままで発見されないわけがないじゃないかという、設定のアバウトさを感じてしまうが、それも含めて1980年代娯楽映画の豪快な、悪く言えば大味なテイストが楽しめるものになっているといえよう。その意味では、『インディ・ジョーンズ』シリーズのような楽しみを提供したゲームに忠実な趣向であるといえるのだ。
ゲームそのものを参考にしている箇所も、劇中でいくつか散見される。トム・ホランド演じる主人公ネイトや、兄弟の設定などは、第4作『アンチャーテッド 地図なき冒険の始まり』を下敷きとしているし、空を飛んでいる貨物機にぶら下がる見せ場は、第3作『アンチャーテッド 砂漠に眠るアトランティス』のアクションを再現している。トレジャーハントにおける師匠のような存在であるサリーとの関係は、マーク・ウォールバーグとのバディ感溢れる共闘により、さらに力強いものとして描写されている。
とくに、荒唐無稽な空中での攻防は、即物的ともいえるアクション映画のスリルや興奮を単純に追っていた、1980、90年代のハリウッド娯楽作品の楽しさを久々に思い起こさせるものだ。近年、80年代をリスペクトした娯楽作は多かったが、ここまで振り切ってストレートに観客を楽しませようとする作品は、なかなか無かったのではないだろうか。