『邪神の天秤』は青木崇高演じる鷹野が主役! 『殺人分析班』シリーズが面白い5つの理由

『連続ドラマW 殺人分析班』5つのポイント

 WOWOWが2015年から制作・放送している『連続ドラマW 殺人分析班』シリーズは、今、最も刺激的で面白いクライムサスペンスで、そのクオリティの高さは海外ドラマファンからも評判だ。2月13日からは人気キャラクターである鷹野秀昭(青木崇高)が主人公となったユニバース作品『邪神の天秤 公安分析班』(以下、『邪神の天秤』)が始まった。このタイミングで改めて同シリーズの魅力を分析してみよう。

緻密なサスペンス小説に基づくストーリー

『連続ドラマW 石の繭 殺人分析班』

 原作は麻見和史による『警視庁殺人分析班シリーズ』(講談社文庫)。如月塔子(木村文乃)が亡き父の遺志をついで刑事となり、「十一係」の紅一点として奮闘するサスペンス小説で現在13巻が出版されている。その中からこれまで3作がドラマ化された。毎回、東京都内の各地で起こる殺人事件は猟奇的かつ謎めいていて、緻密なストーリーテリングによって次第にその真相が明らかに。原作小説がよく練られており、先の展開が読めないからこそ、ドラマも面白いものになる。

 第1作の『石の繭 殺人分析班』(以下、『石の繭』)では、まだ新人の塔子が十一係のエース捜査官である鷹野とバディになり、人間をモルタルで固めて殺す猟奇殺人犯トレミー(古川雄輝)に立ち向かった。塔子はトレミーが捜査本部にかけてきた電話に出たために彼のお気に入りになり、なぜ彼が“石の繭”に人を閉じ込めるのかという犯行動機に迫っていった。

 第2作の『水晶の鼓動 殺人分析班』は『石の繭』の1年後の物語。塔子はトレミーとの対決がトラウマになってしまった状態で、犯行現場に赤いペンキで「◯×」と書かれた殺人事件と連続爆破事件を捜査した。二転三転する犯人像。まさかのトレミー再登場もあり、一見、関係ないように見えた物事が絡んでいく展開でひきつけた。

『連続ドラマW 蝶の力学 殺人分析班』

 また、第3作の『蝶の力学 殺人分析班』(以下、『蝶の力学』)では、ボブヘアになった塔子が大きく成長。鷹野の公安への異動が決まり、その直前、不動産会社社長の死体が発見される。その首を切り裂いて青い花を刺し込んだのは何者なのか? 塔子の元には遺体から切り取られた親指が届けられ、法医学者の町子(菊地凛子)が犯行を分析する。鷹野と町子は旧知の仲というのがポイントで、戦慄のクライマックスでは塔子と鷹野の強い絆が描かれた。

 そして、公安に異動した鷹野の活躍を描く『邪神の天秤』はドラマと小説が同時に制作され、前3作と同じように異様な死体が発見されるところから始まった。飲食店の入ったビルが爆破され、そこから脱出しようとした与党大物議員が殺される。その遺体からは臓器が抜かれ、古代エジプトの神話のように、心臓と羽根を載せた天秤が残されていた。一方、爆弾を作ったのは元過激派組織の男だと判明する。鷹野たち公安は、政治犯と宗教がかった殺人がどう絡んでいるのかを捜査していく。

主人公は人として信じられるエリート警察官

『連続ドラマW 邪神の天秤 公安分析班』

 塔子の戦闘能力は高くないが、推理力と容疑者の心に入り込む共感力には長け、何より殺人犯をなんとしてでも止めたいという刑事としての正義感がある。『邪神の天秤』で主人公になった鷹野も、エリートとしてのプライドを持ちながらも、被害者の立場になって心を痛める人間味があり、生きるか死ぬかの場面で塔子に判断を任せる度量もあって、思わず応援したくなる。鷹野には過去に町子の弟である相棒を死なせており、そのときの真相を知るために公安に異動したという背景もある。

 それに比べると、『邪神の天秤』の公安五課メンバーは共感しづらい。警部補の氷室(松雪泰子)と能見(徳重聡)、ベテランの国枝(小市慢太郎)、班長の佐久間(筒井道隆)は、捜査一課の刑事たちをコマとしてしか見ておらず、情報も共有しようとしない。佐久間は「(十一係との)信頼関係など、最初から存在しない」と言い放ち、鷹野とコンビを組む氷室も、鷹野の捜査の進め方は「被害者、関係者に寄り添っていくスタイル」で非効率的であり、「公安には公安のやり方がある」と否定する。冷たいようだが、今後、氷室が新興宗教団体に潜入させているスパイのことで葛藤するなど、彼女たちが秘めている使命感も見えてきそうだ。

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